成長のため高い理想を持つことは大切だ。しかし、早稲田大学スポーツ科学学術院教授で精神科医の西多昌規さんは、「10代、20代のうちは自分の能力をさらに引き上げるために『高い理想を持つ』ことは大切なのですが、ピークを過ぎても『同じ思考』のままでいると、今度は理想に追い詰められてどんどん苦しくなっていく」と話す。西多さん監修の『やめてもいいこと86 心の疲れをとる事典』(朝日新聞出版)から、完璧主義の人が陥りがちな2つのワナを紹介したい。
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「優勝しても不満が残る」「世界一になっても新記録更新はできなかった」など、アスリートには、高い理想を持って自分を追い込む「ストイック型」の選手が大勢います。これはスポーツのみならず勉強や仕事にも言えること。
心も体も伸び盛りの10代、20代のうちは、自分の能力をさらに引き上げるために「高い理想を持つ」ことはとても大切なのですが、ピークを過ぎても「同じ思考」のままでいると、今度は理想に追い詰められてどんどん苦しくなっていきます。
自分の理想に息苦しさを感じるようになったら、それは思考の変えどきなのではないでしょうか。思考を変えるための方法としてオススメしたいのは、「結果」以外を評価軸にするというもの。自分を褒めることは何らかの結果を出さないと難しいものですが、些細な「できていること」を見つけ、認めていくことから始めます。
例えば、自分のなかで「ダイエットで5キログラムやせる」という目標を立てたら、達成していなくても「お菓子を我慢できている」「2キロメートルジョギングできた」など、小さな頑張りに目を向けましょう。自分がそのことに時間をかけた努力や、頑張ったポイント=長所をしっかり認めて、自分を褒めてあげてください。
■現状に満足できない
「満足できない」という気持ちは、それをポジティブに捉えるか、ネガティブに捉えるかによって大きく変わります。例えば「同期で一番早く課長になったけど、もっと出世したい!」という場合、現状に満足していないことが、次の成長や変化に進むための「ポジティブな動機」になっているわけですから、問題はないでしょう。