そうでなくても、次期衆院選は12年に政権奪還した後の自民党にとって、最も厳しい選挙になると見込まれる。自民党は故・安倍晋三元首相の下で、12、14、17年の衆院選で圧倒的な強さを見せ、21年ではその余力で単独過半数を維持した。22年の参院選では8議席増やしたが、投開票日の前に安倍元首相が銃弾に倒れ、同情票が集まったためであることは否定できない。

 岸田首相に“味方”がいなかったわけではない。6月 9日 には開成高校の先輩で、「岸田首相の後援会長」と言われている読売新聞グループ本社の渡辺恒雄代表取締役主筆と面談した。読売新聞は11日付から「政治の現場」シリーズの連載を始め、第1回は「いつやってもいいと思ってるんです」という岸田首相の告白から始まっている。

 しかしいかんせん、“足かせ”が多すぎた。最も重かったのが首相秘書官を務めた長男の翔太郎氏の問題だろう。昨年10月に秘書官に就任して早々、前述した「官邸機密情報漏洩疑惑」が起きた。今年1月には岸田首相の外遊に同行した際にロンドンなどでの観光疑惑が持ち上がり、広島サミット後に発覚した首相公邸での親族らとの“忘年会”写真流出問題で、ついに辞職に追い込まれた。

■内容スカスカの「こども未来戦略方針」

 6月13日に閣議決定された「こども未来戦略方針」も、岸田首相の解散権の足かせとなった。同方針は「2030年代に入るまでが少子化対策のラストチャンス」とする岸田首相の鳴り物入りの政策で、発表のためにわざわざ同日夕刻に記者会見が設定された。だがその内容は“スカスカ”で、24年度から3年間の集中期間に必要とされる追加予算の3兆5千億円は、財源すら決まっていなかった。記者に目標値を尋ねられた岸田首相は、それに答えることもできなかった。

6月13日の記者会見。岸田首相。記者の質問にとまどう場面もあった

 16日に参院本会議で可決され、成立したLGBT理解増進法についても同じことがいえる。同法は、与党案に国民民主党と日本維新の会による修正案を取り入れたものだが、もともと法制化に反対していた保守層のみならず、LGBT当事者からも「差別促進法だ」「後退だ」と強く批判された。

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