にもかかわらず、岸田首相が同法の早期成立にこだわったのは、LGBT法を推進する民主党が政権を握るアメリカ政府の意向があったからだといわれている。バイデン大統領は21年6月、200人を超える「LGBTQI+」など性的少数者を政府関係者に任命し、昨年6月にはLGBTを擁護する大統領令に署名した。

 これらが内閣支持率にも影響しないわけがない。17日と18日に行われた共同通信、朝日新聞、毎日新聞、産経・FNNの世論調査では、内閣支持率はいずれも下落。とりわけ毎日新聞の調査では、内閣支持率が45%から33%と12ポイントも下落し、不支持率が46%から58%と12ポイントも上昇した。

 もっとも「悪くない状況」もある。次期総裁選で最大のライバルになると思われる河野太郎デジタル相が、保険証や口座ひも付けトラブルなどマイナンバーカード問題の責任を問われていることだ。

 21年の総裁選の1回目の投票で河野氏は、議員票こそ86票と少なかったが、169票の党員票を獲得して議員票146票、党員票110票の岸田首相に1票差まで迫った。その河野氏が失墜すれば、次期総裁選に強敵はいなくなり、岸田首相は事前に衆院の解散に打って出る必要はなくなる。

 現在の岸田首相はまるで解散する意向がなかったかのように装っている。だが解散を考えない首相がいるだろうか。解散権の行使をほのめかすことを含めて、全て首相の特権となる。そういう意味で岸田首相は、解散権を行使したくてもできなかった。阻んだのは自民党、そして岸田首相に内在する問題でもある。

(政治ジャーナリスト・安積明子)

■あづみ・あきこ 兵庫県出身。慶應義塾大学経済学部卒。国会議員政策担当秘書資格試験に合格し、政策担当秘書として勤務。その後テレビなど出演の他、著書多数。「『新聞記者』という欺瞞|『国民の代表』発言の意味をあらためて問う」(ワニブックス)などで咢堂ブックオブイヤー大賞(メディア部門)を3連続受賞。近著に「眞子内親王の危険な選択」(ビジネス社)。趣味は宝塚観劇。

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■あづみ・あきこ/兵庫県出身。慶應義塾大学経済学部卒。国会議員政策担当秘書資格試験に合格し、政策担当秘書として勤務。その後テレビなど出演の他、著書多数。「『新聞記者』という欺瞞|『国民の代表』発言の意味をあらためて問う」(ワニブックス)などで咢堂ブックオブイヤー大賞(メディア部門)を3連続受賞。近著に「眞子内親王の危険な選択」(ビジネス社)。趣味は宝塚観劇。

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