――小学校時代が“人生のどん底”だったのでしょうか?
いや、中学2年生ぐらいでデビューしてからは、今度は欲の塊になりました。誰かに褒めてもらいたい、認めてもらいたい、人が歩めない人生を歩みたいって思うようになったんですね。売れるために常に人よりもいっぱい仕事をして、自分の価値を認識しようともがいていた時期がずーっとあって。だから必死に英語を勉強して、ハリウッドも目指しました。バイタリティーの裏側にあるのは、コンプレックスの塊だったんです。
でも、それって絶対幸せにならないですよ。そこにいたからよくわかる。そんなものを求めたら、もう沼にはまって出られないよって。人間の欲って底なし沼なんです。絶対に満たされない。
ハリウッドでも、そのせいで亡くなった人をいっぱい見ました。プロデューサーだったり監督だったり、たくさんの人がドラッグや抗うつ剤にはまり込んで。私が大好きだった、ある世界的アイコンの歌手の方は、たまたまエージェントが一緒で何度か話したこともあったんですけど、ドラッグのせいでいきなりいなくなっちゃった。人にうらやましがられるようなものを持てば持つほど、心は渇望するものなんだなって、本当に思います。
――欲望の“沼”からどうやって抜け出したのですか?
29歳ぐらいのとき、もしかしたら10年後は生きていないかもしれないって思うぐらいの健康不安を抱えた時期があったんです。そもそも子どものころから、この世からいなくなりたいくせに死が怖いっていう変なトラップにはまっていたんですよね。心気症っていうんですけど、どこか悪いところを見つけては病気だと思い込んじゃう。ちょっと手におできができただけであちこち病院に行って原因を調べて、でも何も出てこないみたいな。大きな薬袋に抗生物質から胃薬からいろいろ持ち歩いていて、薬アディクト(依存)でした。