日本人女優としてハリウッドへの道を切り開いたパイオニアである、俳優の工藤夕貴(52)。6月20日に放送されるドキュメンタリードラマ「ケーキの切れない非行少年たち」(NHK BS1)では、認知機能に弱さがある主人公の母親・里美を演じる。高校生で子どもを身ごもった末に、過ちをおかしてしまった娘と向き合う母親、というハードな役どころだ。一方、工藤自身にも、生きることに苦しみ抜いた壮絶な過去があった。
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――ドラマ「ケーキの切れない非行少年たち」の出演者コメントに、「子どものいない私にとって、里美として生きることはとても難題でした」とありました。これまで母親役は何度も経験されているなか、今回は違った難しさがあったのでしょうか?
自分の子どもが、知らないうちに赤ちゃんを産んで、どこかに置き去りにするようなことがあったら、親ってどんな気持ちなんだろうっていうのが、なかなか想像できなかったんですよね。だから、知り合いの母親15人くらいに、「もしそうだとしたらあなたどうする?」って聞いてみたんです。そしたら、「娘より自分を責めると思う」って言う人が圧倒的に多かった。いろんな世代の人がいたんですけど、結局は、自分がちゃんとこの子を育てられなかったせいでは?っていうところに落ち着くんだなと。それが母性なんじゃないかと思いました。
役に入り込むにつれて、全然泣くシーンじゃないのに泣いちゃったりとか、どんどん気持ちが湧いてきましたね。撮影期間は2週間ぐらいだったんですけど、メンタルがけっこうヤバくて……。撮影前は、東京に長くいることなんてめったにないから友達に会おうとか、このごはん屋さんに行きたいなとかいろいろとプランを立てていたのに、結局、そんな気持ちには全然なれなくて。一人でUber Eatsを頼んで、おこもりしてました(笑)。