以上のような「スマートエクササイズ」による運動の習慣化は、総合体力の維持、向上に役立つのみならず、精神面で「身体が動く喜び」「動ける幸せ」が感じられ、脳神経系の認知機能にも良い影響を与えます。
そして、運動と同じくらい重要なのが「栄養」です。食が細くなり、消化吸収力が低下しやすい高齢期に陥りがちな「低栄養状態」を防止するために、「スマートダイエット」を実践しましょう。糖質と脂質を控えめにすることを原則としながら、栄養バランスの取れた食事法です。
乳製品、卵、肉、魚、大豆製品、野菜、海藻類、キノコ類、果物、米穀類、油脂、砂糖など、いろいろな素材をバランス良く取ることを心がけましょう。標準的な日本食や地中海食のメニューを取り入れるのがおすすめです。地中海食は、食物繊維やビタミンが豊富な野菜、ナッツや果物、全粒粉など未精製の穀類、乳製品、魚介類をバランス良く取ることができる食事です。低飽和脂肪酸のオリーブオイルをほぼ毎日摂取し、肉類を控えて魚介類を多く摂取することで、健康寿命の延伸に効果があるといわれます。
■主治医に相談して、定期的に飲んでいる薬を見直す
そのほか、高齢者の場合、普段自身が飲んでいる薬による影響を考えた「スマート服薬」を意識することも大切です。例えば糖尿病の薬の副作用で低血糖になり転倒・昏睡を起こしたり、睡眠薬の副作用により認知機能の低下をきたしたりすることがないように気をつけましょう。自己判断で服薬を中止することは危険ですので、飲んでいる薬の定期的な見直しを、年齢や体格、筋肉量を考慮しながら、主治医に相談すると良いでしょう。
さらに、認知機能を賦活させるために、「スマート脳トレ」も組み合わせると良いでしょう。教養を問うようなクイズを解くのではなく、記憶・学習・感情など脳のさまざまな機能を賦活(活性化)させることが大切です。楽しみながら頭(脳)を日常生活の中で積極的に働かせて、知的活動を促進しましょう。
健幸華齢を実現するには、(1)運動・フィットネス、(2)食事・栄養、(3)服薬管理と、精神的な強さである(4)メンタルタフネスの4大要素が重要になります。加齢に伴って起きる生理的老化現象を素直に受け入れ、不必要に思い悩まず、気丈に生き延びるメンタル力を身につけましょう。
特別なことを実践するのではなく、日々の生活の過ごし方がうまくなることで健康力が高まります。アクティブシニアになるための初めの一歩として、スマートライフを継続して送れるように、まず心のスイッチを入れることから始めていきましょう。
(取材・文/坂井由美)
【取材した専門家】
筑波大学名誉教授 田中喜代次先生