経済産業省の2022年の調査報告では、8割以上の企業の人事担当者が大学および大学院でのリカレント教育について「効果を感じている」と回答した。文部科学省でリカレント教育を担当する菅原愛さんは「変化の大きい社会の中で、企業も最新の知見を取り入れながらどのように人材育成を行えばいいか悩んでいると思います」と分析する。

「大学、特に大学院での学びは、各分野の専門性が身につくだけでなく、フィールドワークや研究プロジェクトなども通じて、仮説検証を繰り返す批判的思考力・分析力など、価値創造にも役立つ汎用的能力を得ることが期待されます。そういう意味で、長期的な目線での人材育成に大学を活用することは、企業にとっても大変有意義なのではないでしょうか」

 行政もリカレント教育を後押しする。

 文科省は2021年から大学などによるリカレント教育プログラム開発への支援事業を実施している。23年1月には「成長分野における即戦力人材輩出に向けたリカレント教育推進事業」を公募開始し、24年度中の実施に向け準備を進める。デジタル・グリーン分野のリスキルプログラム開発と実施などが柱となっている。

「社会人のキャリア形成が多様化して、どんなキャリアを描きたいかを自問自答していくなかで、大学での学び直しが選択肢の一つになります。企業にも社員一人ひとりの学び直しで生産性を上げることが求められ、その結果として社会全体の賃金の実質的な上昇や人材の流動化につながります。そして、問題意識を持つ社会人の研究は大学にとってもプラスになり、また企業との共同研究にもつながります」(菅原さん)

◆大学院修士から短期講座まで、学び直しの方法はさまざま

 リカレント教育プログラムは、成長分野であるデジタル系のAIやデータサイエンス、環境系のグリーンを始め、文科省が重要分野とした地方創生、女性活躍、起業、イノベーション、医療・介護など多岐にわたる。また以前から人気があるマネジメント系のMBA(経営学修士)、さらにMOT(技術経営修士)、地域創生系の観光やソーシャルイノベーション、公共政策系のサステナビリティ、ビジネスコミュニケーション、心理学、福祉、事業構想、実務家教員養成と挙げればきりがないほどだ。

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