■咬合誘導装置や拡大床は適応の見極めが必要

 早期治療の反対咬合に用いられる「歯列矯正用咬合誘導装置」や、歯列の幅を広げる「拡大床」も、すべてのケースに効果が期待できるわけではなく、逆に、これらを使ったことで歯並びが悪化したケースも少なくないといいます。

「『取り外しができる』『簡単に治る』とすすめられると、お子さんの負担が少ないならいいかなと、受けさせる親御さんも多いと思います。しかし歯科矯正を提案されたのなら、まずパノラマX線撮影とセファログラムでの検査を受けるようにしてほしいです。矯正歯科治療できちんとした効果を得たいなら、時間も手間もかかります。費用や時間を無駄にしないためにも、矯正歯科専門の歯科医師の意見を聞いてみてください」(三村歯科医師)

 矯正歯科を専門的に手がける歯科医師は、日本臨床矯正歯科医会や日本矯正歯科学会のホームページで、近くの認定医・臨床指導医を探すことができます。

 矯正歯科治療は基本的に健康保険のきかない「自費診療」です。個々のケースで異なりますが、永久歯が生えそろうまでにおこなう「1期治療」では、おおよそ50万円前後。永久歯が生えそろってからも治療(2期治療)を続けると、総額で100万円前後といわれます。ただし医療費控除の対象になりますから、治療にかかった費用や通院のための交通費などの領収書は取っておき、確定申告しましょう。

 確かに治療費は高額ですが、早期に歯やあごの状態を把握して、治療開始のタイミングを見極めて適切な治療をおこなえば、時間も費用も、子どもへの負担も最小限に抑えられるといいます。

 両医師ともに、「7~9歳ごろに、ぜひパノラマX線撮影を受けましょう」と主張します。隠れた歯列の異常を早期発見できるからです。パノラマX線撮影も自費診療になりますが、7000円前後で受けられます。

(文・別所 文)

【取材した歯科医師】

みむら矯正歯科院長 三村 博 歯科医師

1985年、日本大学歯学部卒。89年、東京医科歯科大学大学院修了。同大大学病院歯科矯正科勤務、松本歯科大学歯科矯正学講座講師などを経て95年から現職。英国矯正認定医試験およびヨーロッパ矯正上級専門医試験合格。日本矯正歯科学会認定医・臨床指導医。

みむら矯正歯科:東京都西東京市谷戸町2-15-11 ひばりケ丘高野ビル6F

みむら矯正歯科院長 三村 博 歯科医師
みむら矯正歯科院長 三村 博 歯科医師

のむら矯正歯科院長 野村泰世 歯科医師

1982年、東京医科歯科大学歯学部卒。86年、同大大学院修了。同大大学病院歯科矯正科勤務を経て、91年から現職。日本矯正歯科学会認定医・臨床指導医。

のむら矯正歯科:東京都狛江市東和泉1-15-8-3F

のむら矯正歯科院長 野村泰世 歯科医師
のむら矯正歯科院長 野村泰世 歯科医師

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