■施設側との交渉で道が開けることも

 施設側から、「うちではここまでしかできません」と言われると、強くは言えないことも多いでしょう。また、高齢者の心身の状態は変化しやすく、待機していた間に、当初希望していた施設への入居に黄色信号がともることもあります。

 このような場合、すぐにあきらめるのではなく、まずは交渉してみましょう。たとえば前述の訪問看護だけでなく、施設に入居しながら外付けできるサービスはほかにもあります。「ここのケアを受けたいんです」と強い気持ちを伝えれば、なんらかの方法が見つかる場合もあります。もちろん、どうしても不可能な場合もありますが、交渉を繰り返すなかで、あなた自身、親に受けさせたいケアをよりはっきりさせることができます。

 交渉には「強い気持ち=意思」が必要です。そのためには、施設選びの段階から、親の/自分たち子どものこれからの生活のためにどんなサービス、どんな施設が必要かをしっかり見極め、「ぶれない思い」をもって臨まなくてはなりません。それがなければ、どれだけパンフレットを見ても、何カ所見学に行っても、意味がないといえるでしょう。

 そしてもう一つ、忘れてほしくないのは、「この施設で明日、母が(父が)最期を迎えてもなんの後悔もない」という覚悟です。面談のときに言葉にする必要はありませんが、施設を選ぶということはそういうことだということを頭の片隅に置いておいてください。

 前述の女性の母親は、その後、訪問看護を外付けにして、希望のグループホームに入居できたということです。

■お金が払えないからサービスをあきらめる時代がくる?

 最近の高齢者施設は入居者が希望するサービスを手厚く提供するなど、施設ごとに特徴づけをおこなっています。それに伴って、利用する側のチョイスの幅が広がっているといえるでしょう。

 しかし、私は今後、「自己負担分のお金が払えないから、希望の介護サービスはあきらめる」というような現象が起きてくるのではないかと危惧しています。というのも、介護保険サービス利用の自己負担率の引き上げが検討されているからです。所得によって異なりますが、現在はほとんどの人が1割負担です。これを2割負担、3割負担にする動きが出ているのです。

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介護制度も介護の現場も、重大な局面