※写真はイメージです(写真/Getty Images)
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一人暮らしが難しくなった親の施設選び。ほとんどの家族が、パンフレットを入手し、実際に足を運んで見学し、面談を重ねます。そしてようやく決定した施設にいざ入居、というそのとき、「条件に合わない」と入居を断られる事態に。そんなときどうすればいいのでしょうか。その施設をあきらめるしかないのでしょうか。介護アドバイザーの高口光子さんにうかがいました。

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■「おかあさまの現状では入居は不可能です」

 親にとってベストな施設はどこか。

 いろいろな条件を書き出して、たくさんのパンフレットを熟読し、休日にはいくつもの施設を見学して面談。譲れる点・どうしてもこだわりたい点を見直し、翌週もまた見学、面談。そしてようやく「ここならば、おとうさん(おかあさん)が自分らしい落ち着いた生活を送れるだろう」と思える施設を決めることができました。

 ところが、いざ入居となると、すんなりことが運ばないケースも少なくないのです。以前、相談を受けたケースも、そんな一例でした。

元気がでる介護研究所代表・高口光子
元気がでる介護研究所代表・高口光子

 一人暮らしをしていた81歳の母親が転倒して大腿骨(だいたいこつ)を骨折し、入院。50代の女性(娘)は新幹線で週末ごとに帰省して看病していましたが、母親は認知症の症状が出始め、自分で食べることが難しい状態になっていったといいます。

 かつて女性の父親が入っていたグループホームが本人にとって居心地がよく、サービスも丁寧で好印象をもっていたことから、女性は「母も認知症になったら、ここで暮らさせてあげたい」と、ホームの担当者に相談をしていました。

 母親の退院を控えて、一人暮らしは無理と判断し、そのホームにあらためて入居希望を出したところ、思わぬ返答をもらったといいます。それは、「おかあさまの現状では、入居はできかねます」というものでした。

■痰(たん)の吸引や胃瘻(いろう)がネックになることも

「高口さん、どうしたらいいんでしょう、入居をあきらめなければいけないのでしょうか」。途方に暮れた女性は、私のところに連絡してきました。

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高口光子

高口光子

高知医療学院卒業。理学療法士として病院勤務ののち、特別養護老人ホームに介護職として勤務。2002年から医療法人財団百葉の会で法人事務局企画教育推進室室長、生活リハビリ推進室室長を務めるとともに、介護アドバイザーとして活動。介護老人保健施設・鶴舞乃城、星のしずくの立ち上げに参加。22年、理想の介護の追求と実現を考える「髙口光子の元気がでる介護研究所」を設立。介護アドバイザー、理学療法士、介護福祉士、介護支援専門員。『介護施設で死ぬということ』『認知症介護びっくり日記』『リーダーのためのケア技術論』『介護の毒(ドク)はコドク(孤独)です。』など著書多数。https://genki-kaigo.net/ (元気がでる介護研究所)

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痰の吸引が必要で、ホーム側から「入居は見送ってほしい」