「郵便局の価値向上」は民営化の当初からうたわれていたが、16年もの歳月を費消して、窓口は一体どれだけ向上したか。一部の局で最近ようやく電子マネーやスマホ決済ができるようになったが、ほかに大きな変化は思い浮かばない。これまでできなかったことが、このあと急にできるようになるとはとても思えない。
近年は、雇用を削り、サービスの質を落とし、料金を引き上げることで「利得」を捻出してきたのが経営の実態である。
21年からは「土曜配達」をなくし、昨年は「翌日配達」もやめた。夜間や週末の業務を減らし、日本郵便で21年からの5年間で全従業員の8%にあたる3万人を減らす計画だ。
郵便やゆうパックの料金はじわじわ値上がりした。19年度からは、郵便局網を守ることを口実に、郵政グループ全体で年200億円の税負担を軽くする特殊制度も始まった。その分だけ国民負担が重くなっている、ということだ。
郵便物の縮小を思えば致し方ない面もある。しかし、裏組織の利権に直結する「郵便局数の維持」は必死で守り抜くわりに、従業員や郵便利用者、国民の利益や負担はちゅうちょなく後回しにする姿勢が、増田体制のもとでも鮮明になっている。
経営規模が萎んでいくなか、いまの状態を維持して局数の延命を図るなら、郵便利用者と国民の負担は無尽蔵に膨らんでいく。それは「負の遺産」となって将来世代にツケを回すことにもなる。被害が深刻化する前に、私たち自身が郵便局の内実と経営が行き詰まる真因を理解し、その行く末に「審判」を下すべきではないか。
重たいコストを受け入れてでも2万4千すべての局を「必要な存在」として支えるのか。それともコストを抑えるため、本当に必要な規模のネットワークを特定して統廃合を推し進めるのか。
うわべのイメージではなく、事実とデータに基づいた真っ当な判断を下せるように、局長会の実態と郵便局の現場の実情が広く知られることを願ってやまない。