増田寛也社長(写真/アフロ)
増田寛也社長(写真/アフロ)
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 郵便局の利用者が漫然と減り続けるなか、全国2万4千の郵便局網の統廃合は必要だ――。日本経済新聞が1面トップで仕掛けた問題提起は、ある“力”によってすぐに火消しされた。『郵便局の裏組織 「全特」―支配と権力構造』(光文社)を上梓した朝日新聞経済部の藤田知也記者が、舞台裏を解説する。

【写真】日本郵便の社内資料。局舎を取得する時の流れ

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<郵便局網「整理が必要」 郵政社長 統廃合の検討表明>

 日本経済新聞の5月12日付の1面トップに、こんな見出しがでかでかと掲載された。字面どおりに読めば、増田寛也社長が率いる日本郵政グループが、ついに統廃合の検討に踏み切るのか、と受け取れる。

 ところが、いざ記事の中身を読むと、とたんに話が萎んでいく。

 増田氏は、統廃合の時期は「2040年が一つのタイミング」と語り、その検討が始まるのは30年代後半だと書かれている。そんな先まで増田氏が社長を続ける可能性は低く、要するに「自分はやらない」「あと十数年はやらない」と宣言したも同然だ。

 じつは、増田氏は社長の就任当初から、似たような発言を繰り返してきた。

「2040年を過ぎると人が驚くほどいなくなる。そういう時間軸で見ると、未来永劫ずっとネットワークを維持することはもちろんあり得ない」(2020年1月9日)

 このときも統廃合は遠い将来の話で、むしろ自分はまったく手をつけず、郵便局網の価値向上に励むのだと説明していた。

 そんな増田氏が改めて語った言葉をあえて切り取り、誤解しそうな見出しを1面であえてぶち上げたのは、記者自身が、あるいは多くの人が、やはり郵便局の統廃合は先送りせずに検討すべきだ、と考えているからではないか。

 ただし、どんな思惑であれ、内容と不一致の見出しであれ、「統廃合」の議論はおろか、それを口にすることなど決して認めない。そう言わんばかりの利権団体がある。

 日本郵政グループ内で「裏」と呼ばれる、全国郵便局長会(全特)だ。

 日経報道の直後から、彼らはさっそく動き出した。

統廃合は「絶対タブー」

 全特の末武晃会長は5月15日、日本郵政社長の増田氏と対峙していた。日経報道の3日後、週末を挟んだ最初の営業日だ。

 末武氏が「強い遺憾の意」を伝えると、増田氏はこう釈明した。

「郵便局がすぐに廃止されるとの自治体の不安を払拭するため、かなり先まで今のまま残ることを伝えた。安心して自治体事務をゆだねてほしいとの思いで発言した」

「郵便局ネットワークの議論はまだ相当先でいい。まずは自治体の仕事をどれだけ増やせるかが大切だ」

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統廃合を口にするのは「絶対タブー」…