20年以上に及ぶ“蜜月関係” がいよいよ終わるのか――。次期衆院選で選挙区が増える東京での候補者擁立をめぐり、公明党が自民党に対し、事実上の“絶縁宣言”を突きつけた。それぞれが一歩も引かない状況で、着地点が見えていない。公明党がここまでの決断に踏み切った背景には、維新の躍進、そして支持母体である創価学会の意向も影響しているようだ。政治ジャーナリストの安積明子氏が、自公の事情を読み解く。
* * *
「東京における自公間の信頼関係は地に落ちた。東京における自公間の協力関係は解消する」
自公幹事長・選対委員長会談が終わった5月25日午後、公明党の石井啓一幹事長は待ち構えていた記者団にこう語った。
「10増10減」により次期衆院選から東京都内の小選挙区は25から30に増えるが、公明党は旧12区の岡本三成衆院議員を新29区に移動させ、新たに28区を公明党の小選挙区として自民党に要求した。同選挙区は旧9区から分離されたもので、自民党東京都連は安藤高夫前衆院議員を擁立することを内定していた。
だが、「半年近くにわたって交渉してきたのに、いまさら新東京28区には内定者がいると言われても困る」(西田実仁・選対委員長)というのが公明党側の言い分だ。その背景に公明党の集票力の低下という問題がある。2005年の衆院選では過去最高の898万7620票の比例票を獲得したが、2022年の参院選では618万1431票まで減少した。
これは支持層の高齢化に加え、新型コロナの感染拡大によって、訪問や集会による選挙活動が困難になったことなどが原因している。そしてさらなる悩みは「常勝関西」の衰退だ。
今年4月の統一地方選で、維新が定数79の大阪府議会で9議席増の55議席を獲得し、定数81の大阪市議会で6議席増の46議席を得て過半数を占めた。これで維新は予算案や条例案を単独で可決することが可能になり、公明党に協力を求める必要はなくなった。さっそく日本維新の会の馬場伸幸代表は「公明党との関係はリセットする」「次期衆院選では全選挙区で候補を擁立する」と宣言し、大阪3、5、6、16区、そして兵庫2、8区を死守してきた公明党を震撼させた。