そうした関係を公明党が知らないはずがない。八王子市には八王子文化会館や創価大学、東京富士美術館など創価学会関連の施設が多く、萩生田氏は2021年の衆院選で14万9152票を獲得したが、そのうちおよそ3分の1は「創価票」といわれている。にもかかわらず、昨年7月に安倍晋三元首相が銃撃されたことで萩生田氏と旧統一教会の親密な関係が発覚し、創価学会から厳しく批判を浴びた。
さらに自民党側から代替案として東京15区を提示されたことも、公明党の感情を悪化させたに違いない。同選挙区では2021年の衆院選で、柿沢未途衆院議員と前述の今村氏がともに自民党推薦候補として出馬し、7万6261票を獲得した柿沢氏が当選した。しかし今村氏を推した萩生田氏は激怒し、自民党に入党した柿沢氏の都連加入を拒否。さらに今年4月の江東区長選で柿沢氏は、自民党都連が推す故・山崎孝明前区長の長男の山崎一輝氏ではなく、木村弥生前衆院議員を擁立・当選させたことで、関係は修復できないほどに悪化した。要するに自民党が公明党に15区を提示したことは「身内の修羅場に参戦しろ」と言わんばかりのもので、公明党にとってバカにされているのも同じだ。
そしてついには25日の「絶縁宣言」に至る。公明党の石井幹事長は自民党側に以下の5点を示し、「持ち帰って検討したい」という自民党の茂木敏充幹事長の言葉に対して「どんな案を出されても、方針を変えることはない」とはねつけた。
(1)新28区に公明党は候補を擁立しない
(2)新29区については自民党の推薦は求めず、独自に戦う
(3)それ以外の選挙区で、公明党は自民党候補を推薦しない
(4)今後の都議選、区議・区長選などの各選挙でも、選挙協力は行わない
(5)都議会における自公の協力関係を解消する
これには当初、「6月9日解散説」を流して公明党を追い詰めようとした自民党側が慌て出した。自公の選挙協力は自民党にとって「黒字」であり、公明党には「赤字」であり続けたが、それゆえ公明党側に積年のうっぷんがたまっていた。よってこの「絶縁宣言」は、東京のみならず全国にも波及しかねない。