そればかりでなく、2022年の参院選では公明党の石川博崇氏は大阪選挙区で最下位当選だった。石川氏が獲得したのは58万6940票で、最盛期(1998年に山下栄一氏が獲得。白浜一良氏が新進党時代に獲得した101万5919票を除く)の87万2294票より30万票近くも減少しており、まさに崖っぷち状態だ。
このように大阪で失いつつある勢力を補おうとするのは理解できるが、なぜ公明党は新東京28区に独自候補を擁立しようとしたのか。その理由について、ある公明党関係者は「小池百合子都知事の協力を得たいからだ」と述べた。小池知事の衆院議員時代の選挙区である旧東京10区は、豊島区と練馬区の一部を含んでいた。新28区はそのうちの練馬区の部分を含み、豊島区に隣接する。
さらに練馬区は、公明党の支持母体である創価学会の勢力が強いところでもある。4月の区議選では公明党は4人を落選させたが、その前は定数50のうち11議席を占めていた。また菅義偉前首相の盟友として知られた佐藤浩氏の後継として創価学会の政治担当に就任した西直木氏は、練馬区の出身だ。
一方で自民党側も、安藤氏を外せない事情がある。そもそも旧9区は自民党の菅原一秀元経済産業相の地盤だった。しかし菅原氏は公職選挙法違反が発覚し、2021年6月に東京簡裁から「罰金40万円・公民権停止3年」の命令を受けた。そこで同年10月の衆院選で東京比例区から転入してきたのが安藤氏だったが、立憲民主党の山岸一生氏に敗退し、比例復活もできなかった。
そして旧9区は新9区と新28区に分割され、西側の新9区には今村洋史元衆院議員、東側の新28区には安藤氏があてがわれることになった。いずれも清和会(安倍派)の準会員で、都連会長の萩生田光一政調会長の意向が反映されている。
とりわけ萩生田氏の意向が強く出ているのが新28区の選挙区支部長に内定した安藤氏だ。萩生田氏の地元である八王子市内に複数の病院を経営する安藤氏は、いわば萩生田氏のタニマチといってよい。実際に萩生田氏が選挙区支部長を務める自民党東京第24選挙区支部の収支報告書には、「病院長」の肩書の「安藤高朗」の名前で献金の記録が残っている。収支報告書に記載されている住所は、安藤氏が経営する病院の所在地と同一だ。