ペンを持たせると鳥の絵をずっと描き続けることもある=家族提供
ペンを持たせると鳥の絵をずっと描き続けることもある=家族提供
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 視力と聴力が突出して高い特徴を持つユウ君(10)。【前編】では、それが感覚過敏で、視覚が狭すぎて文字全体が見えない、聴力が高すぎて音が刺さるように痛いという生活に苦しむユウ君の姿を紹介した。【後編】では、知能テストの結果で息子が「ギフテッド」だと改めて認識した母親が、彼の特別な能力をどう生かし、社会生活とどう折り合いをつけていったのかを追った。<阿部朋美・伊藤和行著『ギフテッドの光と影 知能が高すぎて生きづらい人たち』(朝日新聞出版)より一部抜粋・再編集>

【1万ドルの賞金を得たユウくんの絵はこちら】

【前編】<音が痛い、文字が見えない「ギフテッド」…感覚過敏で「もうがんばりたくない」と話す10歳少年の苦しみ>より続く

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■凸凹のIQグラフ

 最初、母は自閉症を疑った。専門のクリニックに行った。だが医師は「相手の気持ちをくみコミュニケーションをとれる一方、感覚過敏で人と接するのが苦手というのは、当てはまる例がない。特殊ですね」と困惑した表情で言った。眼科や耳鼻科にも通ったが「異常はない」と言われたという。

 とにかく情報がほしい。何が原因で、親としてどうサポートしたらいいのか知りたい。病院を回った。

 小学校の養護教諭に勧められ、学校の近くにある小児科の心理相談に行ってみた。そこで発達専門の心理士に診てもらった。心理士はまず、ユウ君と雑談した。そしてこう言った。

「落ち着きぶりや受け答えが、小学2年生ではないです。学校では疲れてしまうでしょう」

 そして、発達に関する検査を受けたほうがいいと言い、「WISC-IV」という知能検査を受けることを勧めた。

 知能検査と聞き、母は少しためらった。検査は無料だというが、所要時間は1時間から1時間半ほどかかり、検査する人とユウ君が2人きりになることを伝えられたためだ。内容は「図を見たり言葉を覚えたり、簡単なもの」と伝えられていたが、知らない人と話すことが苦手なユウ君は、予想通り嫌がった。

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「本当に大事な検査でした」