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「ChatGPT(チャットGPT)」の利用推奨か規制か──。教育現場での対応に注目が集まるなか、「いいことはほぼない」と指摘するのは富山大学教授・佐藤裕さんだ。教育でどんなデメリットがあるのか。AERA 2023年7月10日号の記事を紹介する。

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「学生にチャットGPTの利用はすすめません」ときっぱり言い切るのは、富山大学教授で社会学者の佐藤裕さんだ。「社会に出れば使う機会はあるでしょう。使えるようになっておくこと自体は、悪くない。でも自分の勉強のために使えるかというと、ほとんど使えないと思います」と話す。

 佐藤さんは、学生がインターネットで物事を調べる際に口を酸っぱくして言っていることがある。そのデータの内容がどれだけ信用できるものなのか。官公庁の情報なのか企業の情報か、あるいは一個人のものか。どういうサイトに誰が書いたものかを確認することだ。

「かつ、引用の際には出典を明記すること。引用は一言一句、そのまま正確にすること。そうしないとネット上の情報は使えませんと。生成AIで調べる情報は、この条件のどれも満たさないわけです」

 さらにチャットGPTの文章について学生には、「文章の断片データを学習し、それに近づけて再現することが目標。つまり『ありがちな文章』を生成するプログラムだ」と説くという。

「チャットGPTに文章を作らせたり添削したりするとき、『ありがちな文章を作ることになる』ことを受け入れた上で使うなら、使える可能性はあるでしょう。世の中にはきちんとしたものを書かなくても、ありがちな文章を書ければいい場面も出てきますから。それを止める必要はないと思います」

 ありがちな文章で構わない典型の一つが、就職用のエントリーシートかもしれない。こちらもチャットGPT利用の是非が議論されるが、そこはある意味、企業への対抗措置として、いい悪いではなく効果的かどうかで判断していいのではと佐藤さんは考える。

「しかし、教育という場面においては、マイナスにしか働きません。ありがちな文章を作ることで自分の文章を書く能力が失われ、尖(とが)ったところのない、誰でも作れるものになることで文章の価値を薄めてしまう。それで何かいいことがあるか。ほぼないでしょう」

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小長光哲郎

小長光哲郎

ライター/AERA編集部 1966年、福岡県北九州市生まれ。月刊誌などの編集者を経て、2019年よりAERA編集部

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