2020年から新型コロナウイルスの感染が拡大し、住民説明会や外国からの技術者訪日が進めにくくなったのも一因だ。
そして大きかったのが、ヘリウムガス調達の問題だった。ヘリウムガスは日本で生産されておらず、世界最大の供給源である米国などからの輸入に頼るしかない。しかし、コロナウイルスの感染拡大やウクライナ侵攻によって海上輸送は混乱し、世界的な供給不足が生じた。新型コロナウイルス対応の医療用にもヘリウムガスは使われる。ヘリウムガスの価格は上昇傾向にあり、日本でもテーマパークなどではヘリウムガスが確保できないことから、風船の提供を休止する動きがあった。
今回、気球に充填したヘリウムはA社が調達した。
「日本にヘリウムガスのサプライヤーはいくつかあります。今回は量も多いこともあって、3社くらいから仕入れました。大量のヘリウムガスとなればそう簡単に調達することができないのです」(A社)
堺市によれば、失ったヘリウムガスは「数千万円」という。財務省貿易統計などの資料から、市場価格で単純計算しても、今回失ったヘリウムガス6000立方メートルの値段は2000万円から3000万円相当。貴重で高価なヘリウムガスが、空中に霧散してしまったのだ。SNSでは6000万円相当と試算する投稿もある。
堺市によると、ヘリウムガスの再調達が難しいことから、気球運航のめどはたっていないという。
「再度、ヘリウムガスの調達をしないと運航はできません。ヘリウムガスの調達はA社がやっているのでどうなるかわからない」(堺市観光部)
堺市では、5月21日から堺市長選があり、永藤市長は2期目を目指して立候補を表明している。前回の市長選でも永藤氏と争い、接戦だった元市議の野村友昭氏との一騎打ちになるとみられている。
大仙公園に来ていた堺市民からは、
「永藤市長としては、このタイミングで気球の事業をはじめて、選挙戦のアピールにしたかったのではないか」
との声も漏れる。
「運航開始を前にこんなことになってしまい残念です。大仙公園にたくさんいるカラスがくちばしで気球に穴をあけたとか、天皇家が気球に怒ったことでの祟りだとか、いろいろ言う方がいます。運航の時期はヘリウムガスの調達が今になったからで、選挙とは関係ないのですが、市民からはそう見えてしまうのかもしれない。困ったものです」
と、堺市幹部はつらそうに語っていた。
(AERA dot.編集部 今西憲之)