大仙公園に毎日散歩に来ているという市民も、

「日曜日(7日)は、気球らしい形をして近くで作業をされていた。月曜日(8日)に来ると、気球はすっかり小さくなっていて、がっかりでした」

 と話す。

 堺市によれば、気球の発着場は、フェンスで囲まれ、防犯カメラも設置されている。

「7日にA社が現場から離れてからも防犯カメラや機械警備を実施していました。防犯カメラを確認してもらったが、不審な人物は確認できていない。何者かが侵入して気球を傷つけたことは考えにくい。今のところ、まったく原因はわからない」(堺市観光部)

 現在は、気球からヘリウムガスをすべて放出させて、原因を調べているという。

 大山古墳を含む百舌鳥(もず)・古市古墳群がユネスコの世界文化遺産に登録されたのは2019年7月。この前から、世界有数の古墳をもっと観光活用しようという計画はあった。

 日本維新の会・元代表の松井一郎氏は、大阪府知事時代の2013年に、

「仁徳天皇陵を(世界遺産にするために)イルミネーションで飾ってみよう」

 と発言。その後、大阪府知事になった吉村洋文氏も、

「古墳の形を自らの目で見られるよう、仕掛けが必要で、タワーや観覧車のようなものを検討したい」

 と語り、世界遺産登録前には「気球」にも言及していた。

 気球から眺める構想が具体的に動き出したのは、2019年の堺市長選で維新公認の永藤英機市長が誕生してからだ。

 永藤市長は、前市長時代に計画された高さ8mの展望デッキを含むガイダンス施設の建設を中止し、気球導入の検討を指示。古墳群が世界遺産に決定後、堺市議会などで議論された結果、気球案が採用された。

「古墳ですから、近くに高いビルなどを建てるのは費用の関係もあり無理。観覧車、遊覧飛行などさまざまな候補の中で残ったのが気球でした」(堺市幹部)

 しかし、この構想は思うように進まず、事業開始は何度も延期された。

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