地上に届く電磁波はごく一部。その多くは大気に吸収され、地上には届かない (c)NASA, STScI
地上に届く電磁波はごく一部。その多くは大気に吸収され、地上には届かない (c)NASA, STScI

  では、それぞれの電磁波は何が違うのか。「波長の長さ」だ。

 上のイラストを見ると、波長の短いガンマ線がいちばん左に描かれ、右にいくほど波長が長くなる。そして、宇宙から降り注ぐこれらの電磁波のうち、地上に到達しているのは主に「可視光線」と「電波」だけだ(マイクロ波は電波の一種)。つまり、それ以外のガンマ線やX線、紫外線、赤外線の大部分は、大気に吸収されて地上に届かず、地上からは十分に観測できない。

 地上にも大型望遠鏡は数多くあるが、それらは「可視光線」を観測するための望遠鏡、または「電波望遠鏡」がほとんどだ。例外は、「近赤外線」。可視光線に近接する波長を持つ「近赤外線」は、可視光線に対して開かれた「大気の窓」をギリギリにかすめて地上に届く。そのため近赤外線を観測する望遠鏡も地上に建設されている。

 天文観測において、もうひとつ面白い法則がある。星が放つ光や電波などの電磁波を観測すれば、その星がどんな成分で出来ているのかがわかるのだ。

 ヒトの目に見える可視光線は、プリズムを通すと7色に分解できる。これを「分光」という。また、分光された光が虹のようにズラリと並んだものを「スペクトル」という。スペクトルが並ぶ順番はつねに決まっていて、その色の違いは、すなわち波長の違いを意味する。

プリズムに太陽光を当てるとスペクトルが表れる。この色の違いは波長の違いを意味する (c)NASA, ESA, Leah Hustak (STScI)
プリズムに太陽光を当てるとスペクトルが表れる。この色の違いは波長の違いを意味する (c)NASA, ESA, Leah Hustak (STScI)

 ここで重要なのは、可視光線が虹のように分光できるのと同じように、ガンマ線、X線、紫外線、赤外線、電波もスペクトルに分解できるという点だ。

 宇宙望遠鏡に搭載された主鏡は、星が発する光(電磁波)をレンズで集める。その光を「分光器」(スペクトロメータ)で波長ごとに分解し、そのデータを地上局に送る。こうした一連の作業が、宇宙望遠鏡に課せられた主な役割だ。望遠鏡や分光器の仕組みは電磁波の種類によって異なるため、多くの機体においては「X線観測機」や「赤外線宇宙望遠鏡」など、特定の光を観測する専用機として開発されることが多い。

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分光でわかる星の構成元素