「ルフィ」の名を使った犯罪グループが、フィリピンを拠点に日本で特殊詐欺や強盗などの事件に関与したとされている。国内外問わず、そうした犯行を可能にさせるのは「道具屋」の存在だという。聞き慣れない“職種”だが、どんな仕事をするのだろうか。道具屋に直接聞いた。
「ルフィの事件にも間違いなく道具屋が絡んでいる。日本でもフィリピンでも」
そう話すのは、関東地方で数年前から道具屋を手掛けているという男性だ。握られたスマートフォンを見せてもらうと、
「IP電話、1000くらいないですか」
「名簿、新しいもの入荷していますか」
などのメッセージが入っていた。
「振り込め詐欺には、携帯電話、IP電話、日本国内の名簿、時には車などさまざまな道具が必要になるんです。それを、詐欺グループに用意するのが我々のような道具屋の仕事です」
ルフィの事件では、フィリピンから電話をかける「かけ子」、日本で現金を受け取る「受け子」などが、SNSで「闇バイト」として募集されていたことがわかっている。その受け子が凶悪化して強盗犯となり、今年1月に東京都狛江市の殺人事件につながった。
道具屋もSNSを使って、“バイト”を募集するという。
数年前、西日本のある町で、道具屋の指示で振り込め詐欺の電話などのツールを提供したとして、詐欺幇助(ほうじょ)容疑などで逮捕されたAさんに話を聞いた。
当時は20代半ばだったという。なぜ道具屋のバイトに手を出したのか。
「私の知人がかけ子をして捕まったのを知り、振り込め詐欺には直接関係したくないと思いました。闇バイトを検索して細かく見て、たどり着いたのが道具屋の関係でした。報酬は多くても10万円に届かない程度でしたが、『楽して簡単』という言葉に引き込まれて、連絡をしたのが失敗でした」
とAさんは振り返る。
バイトの内容は、Aさんの名義を道具屋に貸すことだった。
具体的な動きとしては、Aさんは道具屋の指示で東京都内のレンタルオフィスに会社を設立し、1千以上の携帯電話、IP電話を契約。その後、これらの携帯電話、IP電話を「卸す」のが仕事だ。