■スケートが好きだから
――シングル時代を含めれば高橋は全日本選手権に17度、世界選手権に10度出場。村元は全日本選手権12度、世界選手権は5度を数える。その数字だけとっても2人のキャリアの長さがうかがえる。そこまでフィギュアスケートに取り組むことができた原動力は何だったのか。
村元:あまり考えたことなかったけれど……スケートが好きだからなのかな。
高橋:俺より好きだよね。
村元:何千、何万の目が集まって、フリーダンスなら4分の、一瞬の世界観をつくる。しかも氷の上です。ほかのスポーツにはないことで、幻想的というか、自分にとって氷の上にいる時点ですごい神秘的なんですよね。
高橋:僕はこれ以外、何もできないから。1回スケートが嫌になって離れて、でも自分にはこれしかできないと舞い戻ってきた。「もう分かった、ここから広げていくしかない」と思いました。やっぱりエンターテインメントが大好きだから、僕はアイスダンスもやると言ったし、見られることも好きなんだろうなと思います。
村元:そうだね。好きだよね。
高橋:恥ずかしがり屋のくせして、でも氷の上に立つと、見られたいと思うんです。
■壮大に広がる夢
――引退を発表してからひと月あまりが経った。2人が目指していくのはどのような未来であるのか。競技者であったこれまでとこれからの活動において、スケートへの思いに違いはあるのだろうか。
高橋:あまり変わらないかな。もちろん競技としては代表を目指したり、代表になったら国の出場枠獲得を考えたりいろいろあるけれど、魅せようと思うその瞬間の気持ちはたぶん変わらないです。
村元:うん、競技ではなくても、全然変わらないかな。
高橋:ここからは「これをやりたい」というのをあえて決めないでおこうと思っています。何かしらの形でエンターテインメントの世界にかかわっていたい、それだけでいい。タイミングや出会いによって世界は広がっていくものだと思うんです。そこから自分が想像していないものが出てきたりする。そういう意味で、決めてしまうと「そうしなきゃ」となってチャンスを見逃してしまうので、いい意味でふらふら過ごしたいですね。なので、今言えるのは「スケートを軸にしていく」ということだけです。