今年5月、競技生活からの引退を発表した”かなだい”こと村元哉中さん、高橋大輔さん。アイスダンサーとして2人が圧倒的な存在感を放つことができた理由、これからの夢を語った。AERA 2023年6月19日号の記事を紹介する。
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――まさに集大成にふさわしいシーズンだった。
2020年にスタートを切って3季目の22-23シーズン、アイスダンスの村元哉中と高橋大輔は全日本選手権で初優勝を遂げると世界選手権では日本最高タイの11位。世界国別対抗戦でも圧巻の演技を披露、シーズンを締めくくった。
海外でも大きな反響を呼ぶ数々の作品を世に送りだしてきた2人は、5月2日に記者会見を開き、競技生活に終止符を打った。いちからスタートして3シーズン、それを締めくくる名演技にどうたどり着いたのか。
高橋:いやあ、やっぱり時間を積み重ねてきたのが大きいですね。でもほんとうに今シーズンくらいからだよね? 先シーズンまでは、なんて言ったらいいんだろう。
村元:探り、探り。
高橋:そうそう。今シーズンはお互いにぶつかり合うことができるようになりました。
■ひとつ殻を破れた
村元:どういうことかというと、例えば練習でも「私はこっちの方がやりやすい」「俺はこっちがやりやすい」とお互いにやりたいことが違っていて、それも全部ぶつけて話すことができたんです。私の場合、家族とかとはぶつかることはあっても、他人と面と向かって本当にぶつかることってあまりなかったんですね。大ちゃんは私にとって、初めてぶつかり合えた人だったので、自分の中でもひとつ殻を破れた気がします。
高橋:僕も家族やコーチ以外の人とぶつかることはほとんどないです。たぶん初めて。やっぱり自分の嫌な部分は見せたくないものですけど、しんどさだったり疲れだったり、わがままだったりエゴだったりも全部出してぶつかれた。本当にぶつかり合うことで殻が壊せた。そこで関係が壊れるのではなく、作品を一緒に創り上げる方向へと進めたのは、哉中ちゃんのタレントというか才能にほれ込んでいたというのがあったからなのかなと思います。
村元:私も大ちゃんをリスペクトしていて、習いたいことがたくさんあるというか、その世界観を体験したい。だからこそ、ぶつかり合える関係になれたのかな。