■「魅せること」を大事に
――2人のスタートは、村元から高橋へのオファーがきっかけとなった。その後、高橋がアイスダンスへの挑戦を決断し2人がカップルを結成することが決まったとき、村元には決めていたことがあった。
村元:大ちゃんと組むことが決まった時点で、もしワンシーズンで終わったとしても私はそれを最後にして競技生活を終えることを決めていました。引退すると大ちゃんから聞いたのは2月の四大陸選手権後でしたが、3シーズンを過ごしてみて、これ以上のパートナーはいないとあらためて感じたので、そのときにも新しいパートナーは見つけないと決めました。
もちろん技術は必要ですし、競技者としては勝つことも重要ですが、大ちゃんはそれ以上に「魅せること」を大事にしていた。それは私もまったく同じなので、いろいろな面で一致していたのがあります。何よりも人間として成長させてくれた。他人の魅力を引き出すことって、なかなか難しいと思うんです。私は自分に自信が持てないタイプなので、大ちゃんはそこを引き出してくれて、気づかせてくれた。いろいろな面で最高の人に出会えました。
高橋:オファーを受ける前から哉中ちゃんのことはアイスダンサーとして大好きだったし、そもそもすごいチャレンジャーだなって思いますね。だって僕はアイスダンス初心者、しかも当時は34歳くらい。たとえ組んだとしても未来があるのかないのか分からない相手にオファーをしてきたんですから(笑)。哉中ちゃんは表現に対してめちゃくちゃ貪欲なところがあって尊敬するし、こういう日本人がこれから出てくるのかなっていうくらい、本当に素晴らしい表現力を持っています。ある意味、魅せることへのストイックさは僕よりもあると思うし、哉中ちゃんに引っ張り上げられてついていく3年間だったと思いますね。
村元:もともとは挨拶くらいしかしたことがなくて、人柄も全然知らなかったんですけど、うれしかったこと、悲しかったこと……本当に、いろいろな喜怒哀楽があった3年間でした。当初はこうなれるとは全然想像していなかったです。