全国の公園で「再開発」が進んでいる。設備は整備され、商業施設が併設されるなど、一見歓迎すべきことに見える。だが、その裏で樹木が伐採されている。居場所を失う人もいる。AERA 2023年6月12日号から。
【写真】大阪城公園でレストランやカフェ建設のために樹木が伐採された
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大阪のシンボルである大阪城公園が、様変わりしつつある。
5月28日、大阪城公園で、トライアスロン大会があった。選手が泳いだのは、なんと堀。堀の水質を向上させ、2017年から開けるようになった。
雰囲気も変わった。かつては「何もない」し、「子どもたちが遊んでいるイメージ」という人もいるが、いま、大阪市内の30代女性にとってこの公園は、休日の朝、一人静かに散歩したくなる場所だ。森の中ではヨガレッスンが行われ、女性はその脇を歩いてカフェに立ち寄ることもある。
「シティ感のあるいい雰囲気に変わりました」
大阪城公園は電通や読売テレビなどによって、2015年度から再開発された。噴水の近くにはカフェができ、園内にレストランやコンビニもできた。劇場オープンを告知するリリースには「多様なエンタテインメントを発信することで大阪城公園の魅力を向上し、世界的観光拠点化を目指します」と書かれており、力の入れようが伝わってくる。
■高木千本以上を伐採
だが、この再開発の裏で、実は樹木が大量に伐採されていることは、あまり知られていない。
大阪城公園の再開発のさなか、サイクリングに訪れた甲南大学の谷口るり子教授(教育工学)は、園内の一部に白い囲いがされているのに気づいた。囲いの中をうかがうと、木が山積みになっている。樹木が伐採されていたのだ。園内を見渡すと、いくつもの切り株があった。
「一体どうなっているのかと思いました」(谷口教授)
別の日に行くと、前回とは違う場所に白い囲いが立てられ、樹木が切られていた。それから、毎週のように確認に行った。
「樹齢数十年の木々を何本切るつもりなのか」
谷口教授が市に情報公開請求すると、15~17年度に施設建設のためにケヤキやクスなどの高木が計1174本も伐採されていたことがわかった。
「伐採された本数に安全性に問題のある木は含まれません。観光客が増えて、にぎわいが生まれたと宣伝されていますが、その裏でこれだけの伐採があったと知られないままでいいのでしょうか」(谷口教授)
府内の40代女性もこう言う。
「伐採されたとは知らなかったです。もともと木々が植えられていた場所から、移植されたのだと思っていました」