大阪城公園でレストランやカフェ建設のために樹木が伐採された/2017年12月9日撮影(写真:谷口るり子教授提供)
大阪城公園でレストランやカフェ建設のために樹木が伐採された/2017年12月9日撮影(写真:谷口るり子教授提供)

 市緑化課への取材によると、移植したのは16~19年にたった230本だった。

 事業者を募集する14年の文書に「一部既存樹木を移植または撤去することを前提に事業計画を提案することができる」と書かれているが、「具体的な伐採の予定が知らされることはありませんでした」(谷口教授)

市民がチェックできない

 市観光課によると、再開発に関するリリースを流し、利用者への公聴会も開いていた。一方で、事業体が複数にまたがっており、同課は再開発に伴う樹木の取り扱いについての広報をすべて把握していない。少なくとも、劇場が完成11カ月前に出したリリースには、イメージ図や詳細が書かれていたが、樹木については触れられていなかった。劇場ができる場所にある樹木がどうなるかは、市民に知らされていなかった。

 都市計画に詳しい明治大学の大方潤一郎特任教授は言う。

「民間事業者が公園に何をどう配置するか、公開の会議で話し合われることは一般的にありません。議論の経過を市民がチェックできないのです。ヨーロッパなら、公開のコンペが行われますが、日本では選ばれる過程が見えません」

 実際に、市が大阪城公園の再開発にあたって、環境影響評価の有識者会議を開くことはなかった。

 大阪城公園のすぐ近くの「難波宮跡(なにわのみやあと)公園」でも、今年から再開発が始まる。レストランやカフェ、スイーツ店ができ、フードフェスなどが開かれる予定だ。

 大方特任教授は言う。

「自治体も民間事業者も、あまり樹木を重視しない傾向があります。樹木をどうするのか、商業化が行き過ぎていないか、市民が問いかけていかなければなりません」

■計画変更したケースも

 大々的に報じられた東京・明治神宮外苑ではスポーツ施設の建て替え、超高層オフィスの建設をめぐって、低木を含めた少なくとも3千本が伐採される。観光名所であるイチョウ並木も、存亡の危機にあることが、知られるようになった。

 だが、ほとんどのケースでは市民らに知られぬまま、樹木の伐採の計画は進んでいるのだ。各地の公園で、レストラン、カフェ、ショップ、水族館を作る計画が進められている。

 葛西臨海公園(東京)では、葛西臨海水族園の建て替えに伴って、移植の可能性がある樹木が約1400本あるともいわれる。

 東京・日比谷公園では、園外のビルにつながるデッキができる予定だ。だが、ここでも約1千本の樹木が伐採される可能性があるとも言われている。

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