「女性たちと議論してわかったのですが、特に非正規の女性を中心に毎日忙しくしている人たちは、軍事費の問題も軍拡の問題もほとんどニュースになっていないため、情報を得られない状態になっています。何も知らないまま始まるのが戦争です。学ぶための団体が『結社』です」
1月、田中さんは大学教授らと共に「平和を求め軍拡を許さない女たちの会」を立ち上げた。防衛費GDP比2%の撤回などを求め、中心グループが情報交換を行っている。田中さんはこれも「結社」の一つだと言う。
「戦争の準備がどこでどうされているのか、戦争が何をもたらすのか。情報を交換することで学ぶことができます」
同時に「声」を上げることが重要になる。シンポジウムや集会、出版などだ。女たちの会では“ミサイルが鳩になる”デザインのスカーフを作成した。これをハンドバッグなどに巻いたりすることで、言葉では言えない人でも「反戦」の意思を示すことができるようにした。そして、女性の側から見た政治が必要だとしてこう話す。
「戦前、女性に参政権はありませんでしたが、戦後やっと手に入れました。必ず投票し、可能な人は選挙に立候補して政治家になり、歯止めなき軍拡を推し進めるのではなく、女性や子ども、若者や社会的弱者の立場に立った政策を進めることが重要です」
戦争を止めるのは簡単ではない。だが、ひとたび戦争が起きれば、多くの人の命と自由が踏みにじられる。
「どんな時代でも、どんな武器でも、どんなやり方でも、戦争の残虐さに変わりはありません。一人一人が本当のことを知ろうとする気持ちを持って、ダメなものはダメと声を上げてほしい。何の罪もない人たちが犠牲になる。それが、戦争の実態です」
東京大空襲の体験者である二瓶治代さん(86)の言葉である。(編集部・野村昌二)
※AERA 2023年6月12日号より抜粋