
異次元の金融緩和、アベノミクス推進したことを受け、首都圏の新築マンション価格は10年近くにわたって上昇局面が続いた。しかし人口減少に伴い、価格高騰にも地域差がみられている。今後どう推移するのか。AERA 2023年6月12日号より紹介する。
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トレンドとしては上向きでも、あらゆる物件が軒並み高騰しているわけではなさそうだ。マンションの平均販売価格が大幅上昇している真相について、個人向け不動産コンサルティング会社・さくら事務所の創設者(現会長)である長嶋修さんはこう説明する。
「最初に東京の都心や、大都市圏の中心部の物件が顕著に上昇し、やがて郊外の物件価格にも波及していったのですが、こうした動きは一巡した様子です。最近の情勢を見ていると、都心の駅前・駅近で開発された大規模案件など、かなり価格が高い物件の供給が中心となっています。つまり、それらが平均の販売価格を押し上げているという色彩が濃くなっているのです」
長嶋さんの指摘を裏付けるのは、東京23区内におけるマンションの「エリア別価格指数」だ。ニッセイ基礎研究所金融研究部主任研究員の吉田資さんが05年を100として算出しているものである。22年に都心エリアの指数は213.9に達し、他のエリアと比べて突出した上昇を記録。通期(05~22年)における上昇率も過去最大となった。
都心エリアと比べれば劣るとはいえ、南西部や東部、北部も右肩上がりを描いている。低迷するのは、23区内であっても不便な場所にある物件や、郊外エリアの物件だという。長嶋さんは指摘する。
「00年代の初めには首都圏で9万戸程度の供給があったのですが、現在は約3万戸にすぎません。都心から距離が離れているエリアや、最寄りの駅から遠い立地にある物件、要は相対的に低価格のものの供給がどんどん減っています。言い換えれば、都心に近いエリアや駅前・駅近の立地にある物件、大規模開発のタワーマンションなどが供給の中心となってきたわけです」