※ニッセイ基礎研究所調べ(AERA 2023年6月12日号より)
※ニッセイ基礎研究所調べ(AERA 2023年6月12日号より)

 郊外エリアや不便な立地の割安物件が供給されなくなったのは、せっかく建てても不人気で売れないからだ。その背景には、バブル期における上昇局面と根本的に人口動態が異なっていることがあると長嶋さんは捉える。

「住宅購入層の中心を30代半ばと仮定すると、いわゆる団塊世代がバブル期にその年頃でした。現在における30代半ば世代の人口は、団塊世代の半分以下にすぎません。加えて、晩婚化も進み、未婚者の比率も高くなっています。バブル期と比べれば、積極的にマンション購入を考えている人たちの絶対数が少なくなってきているのです。既婚者にしても、昔と比べて圧倒的に共働き世帯のほうが多くなっている一方で、自動車の保有比率は著しく低下しています」

 こうしたことから、自宅と最寄り駅との間は徒歩で行き来することを前提に、勤務先までのアクセスに優れた物件を選ぶ傾向が強くなっているわけだ。

■明暗分ける

「快適性以上に、利便性が重視されているのが現状。最寄り駅まで徒歩で片道20分の場所にある100平方メートルの物件よりも、片道3分の70平方メートルの物件のほうが選ばれやすいということです」(長嶋さん)

 SUUMOリサーチセンターの「首都圏新築マンション契約者動向調査」(22年)では、物件選びで重視した項目の最多回答は「価格」(約90%)だったが、「最寄り駅からの時間」(約83%)や「通勤アクセスの良いエリア」(約60%)も目立っていた。そこで、前出の吉田さんはこれらの項目に対する評価がマンション価格にどのような影響を及ぼしているのかを検証。すると、東京の中心部(東京駅)までのアクセス時間が長くなるにつれて、新築マンション価格(坪単価)が下落する傾向がうかがえた。

「周知の通り、すでに日本の人口は減少しており、その流れが続く中で、より利便性の高い場所に人々が集まり、売れない物件がさらに売れなくなっていくでしょう。人口減少のピークを迎える2050年頃まで、(1)全体の10~15%に当たる地域では価値が落ちない・落ちにくい、(2)70%に当たる地域では価値がなだらかに下落、(3)15~20%に当たる地域では無価値化という三極化の構図が鮮明になっていくはずです」(長嶋さん)

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