先だって、スープストックトーキョーの離乳食の無料提供が話題を呼び、同社が声明を発表した。度々起こる、子育てを巡る炎上の“根本”について、漫画家の田房永子さんとライターの武田砂鉄さんが語り合った。AERA 2023年6月5日号の記事を紹介する。
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武田砂鉄(以下、武田):少し前にスープストックトーキョー(以下、スープストック)が離乳食を無料提供する方針を明らかにして、一部の利用者から反対意見が出て炎上騒動になったそうですが、そもそもスープストックのような飲食チェーンだけではなく、ファミレスでも、もちろんコンビニでも、多くの人が入りやすい環境作りを目指しているはず。今回は、過度に「子どものいる女性vs.子どもがいない女性」という構図で記事を作ったり、SNSでバトルさせているのではという気もします。
田房永子(以下、田房):確かに、そういう構図にさせられちゃっているのかなとは思いますね。私もスープストックは、一人で入るのにちょうどいいお店っていう記憶があるから、あのお店を利用することが多い人としては、「子どもが来たら雰囲気が壊れちゃう」って気持ちになるのはわかります。私は子どもが2人いるけど、やっぱり子どもがギャーッて騒いでいると、うるさいと思うから(笑)。
■分けることに違和感
田房:昨年、お笑い芸人さんのライブに行ったときに、私の息子と同じ年くらいの男の子が隣の席でした。家のテレビで観てる時は子どもに話しかけられたりして集中できない。だからその日のために、夫に子どもの世話を代わってもらうなど調整をしたんですね。「今日は心ゆくまで楽しめるぞ!」と思ったら、その隣の子が大きな声で親に話しかけているのが延々と聞こえてくる(笑)。
同じ子育てしている仲間だから、子どもと一緒に楽しみたい気持ちもすごく分かる。その半面、子育てしている身だからこそ一層気になってしまう場合もある。だから、私は「子どものいる女性vs.子どもがいない女性」で分けることに違和感があります。
武田:僕は子どもがいないので、それこそカフェで仕事していて、たとえ「うるさいなぁ」と感じても、家に帰ればいい。逆に言うと、公共空間での子どもの振る舞いでも、大きな声でも、寛容なのかもしれません。こっちが出ていけばいい。子どもよりも大人のほうが、選択肢が豊富に用意されているわけですから。