元朝日新聞記者 稲垣えみ子
元朝日新聞記者 稲垣えみ子
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 元朝日新聞記者でアフロヘア-がトレードマークの稲垣えみ子さんが「AERA」で連載する「アフロ画報」をお届けします。50歳を過ぎ、思い切って早期退職。新たな生活へと飛び出した日々に起こる出来事から、人とのふれあい、思い出などをつづります。

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 結局、不安ばかりの現代においても最も誰もが逃れられない大不安とは「老い」なんじゃないだろうか。

 先日も、私より一回り若い知人に「元気なおばあちゃんになるにはどうしたらいいんでしょう」と聞かれた。大好きだった祖母も母も老いて施設に入り元気をなくしてしまったことがつらいという。でも全てを引き受け暮らしを変えることに耐えられる自分でもない。結局、大事な人の介護を他人に任せ、都心に家を買い子供を私立に入れ好きな仕事をしている私がいるんです。ああもっと誰もが自立した明るい老後が描けるようになればいいのになって……わかりますそのモヤモヤ! 本当にそうなれば、どれほど世の中は明るく前向きになることだろう。なぜそんなシンプルなことがとてつもなく難しくなってしまったのだろう。

 現代の不幸とは、科学の発達と世の中の急激な変化が猛スピードで人間を追い越してしまったことだ。本来なら、医学の発達で人生100年時代がやってきたことに多くの人がバンザイを叫んでいいはず。でも現実はどうだろう? 多くの人が、この降ってわいた長寿に怯えている。「うまく老いて死んでいく」方法なんてちょっと前まで考える必要もなかったのが、今や誰もが直面しなくてはならない大テーマとなってしまった。

すごいタイトルですが中身は怖くありません(笑)。笑って地獄を脱出しよう!(写真:本人提供)
すごいタイトルですが中身は怖くありません(笑)。笑って地獄を脱出しよう!(写真:本人提供)

 もちろんそれは私自身のテーマでもある。というか、その方法を見つけるために会社を50歳で卒業し、人生の下り方、すなわち「明るく元気に下っていく方法」を見つけようと足掻いているのである。

 で、何事もやってみるもの。私はついに、その方法を見つけたのである。無論、万人にこの方法がフィットするかどうかはわからないが、少なくとも私自身は「これしかない」と確信するに至った。そして、そのことをこのたび新刊にすることができた。もう思い残すことはない。しかしまだ人生は続く。どこまで行っても「勝ち逃げ」はなし。それが人生100年時代の醍醐味なのであろう。そう思って今日もバタバタ生きる。きっとそれを幸せというのだ。

◎稲垣えみ子(いながき・えみこ)/1965年生まれ。元朝日新聞記者。超節電生活。近著2冊『アフロえみ子の四季の食卓』(マガジンハウス)、『人生はどこでもドア リヨンの14日間』(東洋経済新報社)を刊行

AERA 2023年5月29日号