田村:今回のアルバムを録る前に「猫ちぐら」っていう曲を作ったんですけど、あれは全くメンバーと会わずにレコーディングしましたから。
草野:密にならないようにね。
田村:そうそう、交替でスタジオに入って、後で音を重ねて作った。そのときは新しい感覚というか、「こういうやり方もできるのか!」って面白くもあったんだけど、その後に「紫の夜を越えて」の収録で久しぶりにスタジオでメンバーと音を合わせたときに、「やっぱバンドっていいよなぁ!」ってすごいテンションあがったもんね(笑)。
草野:もうね、集まって「せーの!」でやると、全然違うなとは感じましたね。
田村:何て言うか、バンド始めた頃の初期衝動みたいなものがよみがえった感じがしたよ。お互いに刺激し合う感覚。
三輪:毎回「今あるものを全部出し切ろう」と思ってやってはいるんだけど、今回は久しぶりっていうこともあって、そういう楽しさが音にも出てるかなとは思う。
崎山:やっぱりコロナがあって、延期してた「見っけ」のホール公演も中止になっちゃって。そういうことを経て、今回「今できることをやろう」と集まった。だからメンバーがそろって音を出すのがとにかく楽しくて。リハとか本番とか関係なくずっと音を鳴らしてたい、みたいな(笑)。個人的には、コロナをはさんでちょっと原点回帰できた部分もあるかなって思います。
田村:あ、あと今回はスケジュールが変則的だったのも大きかったな。いつもはレコーディングとライブの期間を完全に分けているんですけど、今回はレコーディングの間に“NEW MIKKE”のツアーがあって、それがすごくいい方向に影響を与えてくれた気がします。何と言うか、バンドとしての自己肯定感が高まった感じがしたんだよね。ライブで感じたお客さんの反応や熱が、体に残ったままレコーディングに入れたっていうのもあるし、合間にライブ音源をたくさん聴く機会もあって、改めて手応えを感じられた部分もある。「やっぱスピッツいいじゃん!」って。
■平常運転に戻ってきた
――6月からは2年ぶりの全国ツアーが始まる。ツアーのホール公演は7年ぶりとなるが、今の心境は?
草野:ホールでのライブが久しぶりなので、どうなるかなとは思ってますけど……。ただ、これ俺が言うのもなんですけど、うちのお客さんは優しいんでね(笑)。あんまり気構えることなくやりたいなと思います。肩に力が入り過ぎちゃうと、5割くらいの力しか出せなくなっちゃうから俺は。