今月17日、前作の「見っけ」から3年半ぶりとなる17thオリジナルアルバム「ひみつスタジオ」をリリースしたスピッツ。6月からは2年ぶりの全国ツアーを開催。コロナ禍を乗り越え、4人は再び音楽の喜びを感じている。AERA 2023年5月29日号の記事を紹介する。
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――「ひみつスタジオ」を全曲通して聴いたときに、まず浮かんだのが「回復」という言葉だった。こぼれ落ちた心のネジを拾い集め、ゆっくりと締め直してくれる感覚。1曲目の「i-O(修理のうた)」を始め、これまで以上に前向きさを感じる。
草野:ここ数年、世の中が明るくなかったじゃないですか。だから余計に明るい作品を届けたいと思ったところはありますね。自分たちも演奏したり歌ったりして元気が出る曲がいいなって。「時代性」みたいなものを意識して曲を作るわけではないですけど、結果的に何となく出ちゃう部分はあるかもしれません。
田村:「紫の夜を越えて」は、コロナの時期とちょっと関係してるよね?
草野:あれはニュース番組のエンディングに使われることが最初から決まってたしね。ちょうどコロナの感染拡大が連日報道されていた頃で、それ以外にも色々なニュース映像のバックで流れるイメージがあったから。ただ個人的には、あんまり色をつけたくないかな。リスナーの皆さんそれぞれが自由に聴いてほしいです。あんまり俺が「この曲はこうで」と説明したら、つまらなくなっちゃうだろうし。
三輪:それはそうね。
草野:最近はよく「自分が歌ってほしい歌詞」を作りたいなとは思う。若いときは言いたいことを言う感じでしたけど、長くやっていると、色んなところでライブをしたときのお客さんやスタッフさんの顔が思い浮かぶんです。それが自然に曲にも滲み出てきているんじゃないかな。
■よみがえった初期衝動
崎山:今回のレコーディングは、その前にコロナで痛い目にあったぶん、すごい楽しかったよね。
草野:うん。スピッツだけじゃなくエンタメ界は皆そうだったと思うけど、一時期コロナ禍で思うような活動ができなかったんですよ。その間も、ちょこちょこレコーディングはしてたんですけど、いつリリースできるかわからない状況でした。なので、「今どんなことしてるんですか?」と聞かれたときに、「秘密の活動をしてます」と言うしかなくて(笑)。今回のアルバムのタイトルを考えるときに、そのことを思い出して、「実はこんなことしてました」っていうアンサーの意味も込めて「ひみつスタジオ」とつけました。