現在、TOPIXの主要500銘柄の4割以上がPBR1倍を割っている。現金や土地などの資産価値が100円だったとして、株価は99円以下に「ディスカウント評価」されている状況だ。
「知られざる優良銘柄という言い方もできますが、企業側がIR活動にもっと力を入れる必要もあると思います。経営者は夢を語っていただきたい。成長しそうだと思う企業に投資家は注目します」
山道氏はJPXのトップとして今後も激務の連続が予想される。
「休日は仕事でもプライベートでもゴルフが多い」という。ちなみに好物は子どもの頃から食べていたお好み焼き。
「土曜の午後、小学校から家に帰り、祖母にもらった30円でお好み焼きを買うのが楽しみでした」
やはり焼きそばの入った「広島風」ですかと質問した。すると山道氏はちゃめっ気たっぷりに、しかし大真面目に答える。
「我々にとっては、あれが『お好み焼き』で、他に関西風がある感じです。『広島焼』と看板に書いてあったら、店主は広島人ではないぞと思って入りません(笑)」
なるほど、大変失礼しました。
「クレープみたいな薄い生地の上にキャベツを山盛りにして、豚バラでふた。イカ天やかまぼこ、天かすもパラパラ。卵。あっ、仕上げにオタフクソースをたっぷりね。よだれが出てきちゃったよ」
日本有数の国際金融マンの心の奥には、広島の山を駆け回り「正真正銘の」お好み焼き(30円)を頬張る少年が元気に生きていた。
編集/綾小路麗香、伊藤忍
※『AERA Money 2023春夏号』から抜粋