山道氏は「多くの人がもっと手軽に買えるように、という声は認識しています」と言った。
欧米では1株につき1つの議決権があるが、日本では会社法の定める単元株制度により、1単元以上の株式を保有する株式にのみ、議決権等の権利が付与される。
「東証は毎年、最低投資金額の高い企業に対して『投資単位の引き下げに係る考え方および方針等の開示』をお願いしています。2022年10月には引き下げに向けた株式分割の実施を要請し、約30社が応じてくれています。
株価が高い銘柄を誰もが買いやすくしたいという気持ちは私にもあります」。
東証は2022年4月に市場1部、2部、マザーズ、ジャスダックの4市場を「プライム」「スタンダード」「グロース」の3市場に再編した。
だが、旧東証1部銘柄の84%がプライム市場を選択。上場基準に満たない企業まで「経過措置」の名の下にプライム市場へ移行させたことを批判する声があるが、どう考えているのか。
山道氏は、この質問にも逃げなかった。「先進国では最上位市場の銘柄数が最も多いのは珍しくない」と断ったうえで、「大事なのは銘柄数ではなく、上場基準の適合に向かって取り組んでいただくことです」と答えた。
2023年3月末現在の上場企業数はプライムが1834社、スタンダード1446社である。ここからは本誌の臆測だが、上場基準を満たしていない企業は中長期的に「退出」の方向に動くかもしれない。
東証ものんびりしているわけではない。外部有識者による「市場区分の見直しに関するフォローアップ会議」の議論を踏まえ、上場会社に対し、資本コストや株価を意識した経営の実践を要請した。
上場企業に対して求めた一連の対応は、次の通りだ。
●まずは自社の資本コストや収益性を的確に把握する
●その内容や市場評価に関して、取締役会で現状を分析・評価する
●そのうえで、改善に向けた計画を策定・開示する
●投資家との対話の中で、これらの取り組みを継続的に更新する
「日本株は再評価の余地が大きい。企業経営者に、投資家と目線を合わせてもらうことが重要です」