宮田裕章(左)と田原総一朗

田原:中国の新疆ウイグル自治区でも、人権を無視した条件で人々が働かされていることが国際的に問題視され、不買運動も起きましたね。中国はそれでもウイグル政策を改めようとしませんが。

宮田:もう一つは、廃棄の問題です。1枚の服を作る際に大量の水を使うんですが、これまでは生産した服の4割から6割を廃棄するのが前提でした。しかし、それがどれだけ環境に悪いかが可視化されるようになって、人の欲望だけに応えるビジネスが許されなくなってきた。これまでサステナビリティーというと、知識階層の共同幻想のような側面がありましたが、一人ひとりの生活者が商品を選ぶことそのものが未来につながるという実感を、世界中の人々が持ち始めています。

田原:そう考えると、デジタル化にも良い面はありますね。対話型AIの登場も無視するわけにはいかないし、逆にチャンスだと捉えるべきだ。

宮田:そのとおりです。対話型AIの登場による新しい流れでまた経済も変わるでしょう。これまでは確かに米国のシリコンバレーや中国の一部の企業が勝者でしたが、そこからさらにフェーズが変わるところで、日本も勝負しなければいけない。便利さの裏にあるリスクと向き合いながら、新しい産業をつくれるかが今後のカギになるでしょう。

田原:お話、よくわかりました。ありがとうございました。

(構成/本誌・秦正理)

週刊朝日  2023年6月9日号

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