対話型AI「ChatGPT」が話題だ。AIの急速な進歩で、人間の仕事が奪われるという説すらある。新技術は世界をどう変えるのか。ジャーナリストの田原総一朗氏が、気鋭のデータサイエンティスト・宮田裕章慶大教授に切り込んだ。
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田原:今、人工知能(AI)など、IT分野の進化が著しい。数年前から、AIが普及すると人類の仕事の9割がなくなるなんて言われています。
宮田:従来と同じ仕事がなくなることは確かでしょう。ただ、新技術によって労働の概念自体が変わってきて、新しい仕事が必ず生まれます。
田原:似たようなことが19世紀にもあった。イギリスでさまざまな産業機械が発明されて、当時の人間は自分たちの仕事がなくなる不安から、機械をぶち壊して抗議する「ラッダイト運動」を起こした。しかし、結果的には産業革命によって仕事は増えましたね。
宮田:歴史は繰り返すので、歴史を遡って学ぶことで、新しい技術転換で何が起こるかを想像しやすくなります。社会はどうなるのかと皆が不安を覚えたインターネット時代の到来後も、やはりIT分野の企業が次々に生まれました。
田原:今、対話型AIの「ChatGPT」が話題です。AI研究の第一人者である東大の松尾豊教授も、対話能力が非常に高く、人間よりずっと頭がいいと話していた。
宮田:ChatGPTはデジタル革命をさらに加速させる可能性を秘めています。たとえば、コンサルタント業なども仕事がガラッと変わるでしょう。コンサルは「わからないから教えて」と問われたことに応える仕事。すでに単純な知識の検索はグーグルなどに置き換わっていて、その先の「課題をまとめて対策を練る」という仕事も、ChatGPTと対話すればすぐに答えが出てくる。今後のコンサルには、さらにその先を提示する仕事が求められるようになる。
田原:その先というと?
宮田:教育分野にも関わることですが、今後、より大事になるのは「問いを立てる力」。これって何だろうとか、どうすれば世界はよくなるのか、物事が面白くなるのかといった、人間が持つ好奇心や探究心が重要になってきます。これまでの教育はそうした力を「センス」という言葉で片付けて伸ばそうとせず、とにかく知識をつけさせる姿勢でした。しかし今後は、人の知識はAIによって平均化されてしまいます。