
ナナさんに対し「半年近い活動期間の中で一番話が弾んだ相手でした」と話すタカシさん。その後、数回のデートを経て、約3カ月後、タカシさんからナナさんにプロポーズをした。現在は休日に二人でアニメ映画を見に行ったり、フィギュアの展示会に出かけたりしている。結婚して良かったことは「家庭の中で趣味を共有できること」と二人は口を揃える。
「もし面白かったアニメ映画があった時、友達とLINEで感想を言い合うこともできますが、すぐ隣に共有できる人がいるのはやはり魅力的です」(タカシさん)
「実家にいた時は、コスプレ趣味を隠していたので衣装も見えないよう気を遣っていました。今はばれて困ることが何もないので、互いに部屋を開けっ放しにしている。すごく気楽です」(ナナさん)
ナナさんのように、結婚に興味はあっても自身の趣味に引け目を感じていたり、「推し活」に熱中するあまり結婚から遠ざかっていたりする人々は、男女ともに少なからず存在する。「とら婚」は、そうした層に手を差し伸べるべく、「趣味と結婚の両立」をキャッチコピーに掲げ設立された。
開業後はSNSを通じて話題が広がり、2017年3月から6年3カ月間で、成婚者(プロポーズを経て退会した会員)は1200人にまで増えた。22年10月には、オンラインに特化した「とら婚コネクト」という新ブランドも立ち上がっている。チーフアドバイザーの正井さんはこう話す。
「お休みの日にマンガを読んだり、アニメを見る程度のライトな層から、プロで漫画家などのクリエイターをされている方々まで、客層は様々です。私達としては、どんな趣味も誇りに感じてパートナーを探して欲しいと思っています」
同じオタク同士であっても、結婚に辿りつくケースと辿りつかないケースは何が異なるのか。今回、「とら婚」を通じて成婚退会に至ったカップル数組に話を聞いた。共通していたのは女性側が世間一般の見方に囚われず、自分自身の価値軸でもって男性に魅力を見出していたことだ。