今年2月、週刊朝日の「修活」特集第2弾で、大切な器を金継ぎしてもらったエピソードを話してくれた神奈川県在住の杉田昌隆さん(50代)は、自身でも修活を実践している。たとえば愛用のジーンズ。穴が開くたびにダーニング(イギリス発祥の衣類補修法)をし、30年近く履き続けているという。ほかにも、手ぬぐいの端切れでTシャツをデコレーションしたり、虫食いで穴が開いてしまった風呂敷とシャツの袖を組み合わせて肩掛けバッグを作ったりする、リメイクの達人なのだ。
「もともと物を捨てられない性分というのもありますし、母が洋服店を営んでいたので家で洋服のお直しをしている姿は子供のころから見ていました。10年ぐらい前に、セーターにひじ当てをつけたのが始まりでした。それが面白くて、次はジーンズでやってみよう!という感じで、今は楽しみながらやっています」
家にミシンはなく、すべて手縫いだ。しかも、誰にも補修方法を習ったことはなく、すべて見よう見まねの我流だという。
「リメイクが趣味になるとは思ってもいませんでした。私は運動が好きで、休日は自転車などほとんど屋外で過ごすタイプだったんです。ただ、アウトドア派には弱点があって、雨が降ると家で本を読むくらいしかない。でもリメイクの繕い物を始めてから、晴れたら屋外、雨なら繕い物と充実した。今では店に売っているものより、自分で自分のためにリメイクしたもののほうが好き。買いに行くのは端切れなどを売っているリユース店ばかりです(笑)」
杉田さんはほかにも、包装紙や紙バックのデザインを活かしたブックカバーも制作している。その本の内容からイメージしたデザインを選んで、その本だけのためのブックカバーを作る。この春には個展を開き、これまでつくったオリジナルのブックカバーを公開した。たとえば、遠藤周作の『深い河』には長崎銘菓の「クルス」の修道女の絵を使ったカバーを、多和田葉子の『雪の練習生』には2頭の白クマが後ろ向きに肩を組んでいるコカ・コーラのイラストのカバーをあしらった。
「リメイクにもブックカバーづくりにも正解はないけど、間違いもない。楽しいからやっているだけです」
登場いただいた3人に共通するのは、不要になったものに手を加え、再び命を吹き込む楽しさを満喫していることだろう。修活とは、実はクリエイティブなことだったんだと実感させられた。
※週刊朝日オンライン限定記事