時計修理の繊細な技術を独学で見につけた白賀さん

    
 精密機械の王様ともいえる機械式腕時計の修理を趣味にしているのは、都内在住の白賀太一さん(40代)。十数年前に職場で昇進した自分向けのお祝いに買ったロレックスがきっかけで機械式腕時計のメカに興味を持ち始め、腕時計のカスタム(改造)や修理にのめり込んでいく。

「もともとプラモデルやミニカーが好きだったので、腕時計も抵抗なくチャレンジできた」と白賀さんは言う。

 初めはオークションサイトで安価で出品されていた古い国産腕時計を購入し、修理にチャレンジ。未経験だったが、ネット上で見つけた腕時計修理を趣味にしているサイトの書き込みを読み込み、学びながら挑戦した。

これまでに修理した時計は40本ほど

「初めのうちは部品ひとついじるのも怖かったのですが、ネットで勉強しながら少しずつできるようになっていきました。うまく動き始めた時にはうれしくて、さっそく次にチャレンジしたくなる」

 オークションサイトでは3千円と破格に安い出物もあれば、ジャンク品なのに1万円を超えるものもあるが、初めは安く買えるオートマチックの腕時計で腕を磨いていった。作業は平日の夜、家族が寝静まってからと決めている。

「休日は子供のために使いたいので、自由に使える平日の夜だけです。だから家族にも認めてもらっています」

 作業デスクの周りには工具がずらりと並ぶ。目にレンズをはめて時計の内部をのぞく白賀さんの手には、使い捨てのビニール手袋。手の脂が精密機械の時計には大敵なのだという。これまで40本以上の壊れた機械式腕時計をピカピカで新品同様に修理した。

 この日、白賀さんの腕にあったのは機械式ではなく、クオーツ式の腕時計だった。

「クオーツの腕時計にも挑戦したくなって(笑)。今のお気に入りです。最近は忙しくてなかなか時計をいじる時間が取れないのですが、それでも出物がないかネットを探しています。最近は、これまでネットで見るだけだった時計修理が好きな同志と交流したいなとも思っています」

〝磨き〟は単調な作業だが喜びも大きい
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