■向こうでも絵を描くんですか
帯:瞑想ですね。
横:先生がやってらっしゃるホリスティック医学はどっちかっていうと内科になるんですか。
帯:ホリスティック医学はボディー(体)、マインド(心)、スピリット(命)の三つの側面から、人間をまるごとみるんです。
横:ああ、それはアートと同じです。
帯:体をしっかりみるために西洋医学をしっかり学んでいないといけないし、患者さんとこちらの心がピタリとひとつになるっていうのが大事なんです。そして命のエネルギーを高める。命はまだ科学が解明してませんから、あまり大きなことは言えないんですけど、西洋医学ではとらえられない命のエネルギーを想定して、いかに高めるかをやる。体、心、命と付き合うというのは、まさにおっしゃったように芸術的だっていえば、そうなんですよね。
横:僕が病院に興味を持つのは結局そこなんですよ。自分について自分が何を考えて何をしようとしてるのか、どういう存在なのかっていうのは知りたいと思いますよね。それは形而上学的に難しく考えたってわからない。だけど、病院に行けばあそこが痛い、ここが悪いっていろいろ教えられる。体から入って僕はこういう状態だとわかる。精神的に自分はどういう人間かと考えてもわかりません。だけど肉体的に説明されたほうがよくわかるんです。自分とはこの身体なんだと認識します。
帯:なるほど。いいですね。
横:僕は病気の本を2冊書いているんです。
帯:それは読んでみたいですね。
横:いや、恥ずかしいです。病気にかかって、治るまでのプロセスを書いているんですよ。
帯:それは大事ですよ。
横:それがね、ほとんど医学的に治ってないんですが、ひょんな行為によって治るんですよ。
帯:わかります。
横:たとえば、パリに行った時に日本のレストランに入ったんですよ。でも料理を見た途端に急に具合悪くなったんです。だから、全然お箸もつけないでタクシーで帰った。カミさんと一緒に。帰る途中にクレープを売っていました。帰った途端ね、熱がすごく出たんです。でもクレープが食べたくてしょうがないんですよ。それでカミさんにクレープを買ってきてもらった。それを食べた途端、熱がさっと下がったんです。そのあと、映画のナイトショーを見に行きました。
帯:いいですね。横尾さんの体と命がクレープを要求していたんです。それが心にあらわれた。