日本は世界の多くの人からも、日本国内の多くの人からも過小評価されている側面があると思っている。日本の大企業は想像以上にグローバルで、外資系企業の飛躍によって想像以上に国内もオープンになってきている。革新的なイノベーションよりも、着実に先端技術をブラッシュアップして世界で実装するタイプのイノベーションもいろいろなところで着々と行われている。
そして少子高齢化と過疎化に見舞われるけれども分断が浅い社会は、これから10年でさまざまな技術や仕組みの導入によって他国のモデルにもなりうる要素を秘めている。そういうテーマを私はカーネギーで今後もどんどん掘り下げていくが、これはスタンフォードとシリコンバレーの物の見方をするから見えるポジティブな側面とストーリーである。
また、スタンフォードで行っていたシリコンバレーと日本をつなぐプロジェクトをカーネギーで引き継ぎ、「Japan-Silicon Valley Innovation Initiative(JSV)@Carnegie」という新しい企業協賛プロジェクトを作り、毎月のクローズドな勉強会や日本向けの公開イベントをはじめた。
グローバル向けには日本の新しいストーリーにつながる発信をしながら、日本向けには日本語でどんどん改善点や外から見た新しいビジョン、そしてシリコンバレーからの示唆を伝えていく。そしてシンクタンクの役割の一つである、「表立って目立たなくても、要人、オピニオンリーダーや財界のリーダーなどと信頼関係を構築していろいろな人につなぐなど、良いインプットをしていく」活動も行っていく。
■日本のスタートアップエコシステムへの期待
新しいことにチャレンジし、新しい価値を作り出していけるという意味でスタートアップエコシステムはおおいに重要である。スタンフォードはアメリカ経済を牽引しただけではなく、世界のさまざまな産業に大きな影響を与えたシリコンバレーのエコシステムの中枢にある。著者はスタンフォードにいたころから日本のスタートアップエコシステムを研究しているが、シリコンバレーの理解をもとに日本の状況を分析すると、これからの発展は非常に期待できると考えている。しかし、もちろんシリコンバレーを全部まねすればよいというわけではない。