同じアメリカでも、フラットな組織とあまり縦社会ではないシリコンバレーの文化は、東海岸とも大きく異なる。シリコンバレーに比べて、文化的にも物理的にも縦社会のワシントンDCのカーネギー本社では、それを象徴するようにプレジデントのオフィスは8階建ての立派な建物で、最上階の天守閣のようなスペースにある。
しかし、スタートアップ気分でまだメンバーが著者一人のパロアルトのオフィスでは他の財団のオフィスを一部間借りして、プレジデントの机の隣で私が仕事をするというコントラストが実にシリコンバレーらしい(もちろんクエヤール氏はワシントンや世界中を飛びまわっていてあまりオフィスには来ないが)。
カーネギーの新生日本プログラムは、日本はその経済規模に対して国際的にプレゼンスが低すぎるという問題意識をもっている。その大きな理由は、国外からも国内からも、日本に対する思考フレームやストーリーが魅力に欠けていることにあると考えている。「失われたウン十年」「少子高齢化と過疎化の課題先進国」「ジャパン・アズ・ナンバーワンになれなかった日本」「変われない大企業」などのフレーミングでは日本のポテンシャルを過小評価してしまいやすい。
日本の経済はまだカナダの倍以上あり、ドイツの1.3倍、イギリスの1.8倍ほどあるが、その規模にともなう振る舞いができていない。日米関係においては、実は日本企業は非常に刺激的なシリコンバレーとのコラボレーションをいくつも進めている。社会の分断がアメリカに比べたら劇的に低い日本は、震災の復興税などもサクッと通してしまうぐらい連帯意識が強い。
新しい技術や業界の競争のロジックを作り出したり、斬新なイノベーションを作り出したりするのは得意技ではないが、部分最適化においては非常に強い。また、内からも外からも過小評価されているスタートアップエコシステムはもっと世界にアピールしながら、シリコンバレーからの視座で日本政府に提言を行っていく余地はある。