社会科学の分野ではちょうど2000年ごろにシリコンバレーのエコシステムについての研究が相次いで出版されはじめたが、ほとんどの学生は無縁だった。人文系はなおさらである。工学部の学生は就職先としてシリコンバレー企業に入る人もいたが、Googleはまだパロアルトの小さなオフィスにあり、Appleもスティーブ・ジョブズが戻ってきたばかりであまりイケている感じはしていなかった。
その後、卒業生たちの行方をたどると、飛躍したシリコンバレーのエコシステムで大活躍した人が多いが、在学中は大学全体がシリコンバレー熱に燃えているという感じではなかった。ただ、世界選抜のものすごい人たちがさまざまな人生経験からの視座をもとに積極的に授業でのディスカッションに参加したり、学部生はほぼ全寮制の生活で、夜更けまでさまざまな世界や人生についての議論を重ねたりしていく刺激は計り知れない。
櫛田健児
カーネギー国際平和財団シニアフェロー。シリコンバレーと日本を結ぶJapan-Silicon Valley Innovation Initiative@Carnegieプロジェクトリーダー。キヤノングローバル戦略研究所インターナショナルリサーチフェロー。東京財団政策研究所主席研究員。スタンフォード大学非常勤講師(2022年春学期、2023年冬学期)。1978年生まれ、日本育ち。スタンフォード大学で経済学、東アジア研究それぞれの学士号、東アジア研究の修士号修了。カリフォルニア大学バークレー校政治学博士号修了。スタンフォード大学アジア太平洋研究所でポスドク修了、リサーチアソシエイト、リサーチスカラーを務めた。2022年1月から現職。主な研究と活動のテーマは、(1)Global Japan, Innovative Japan、(2)シリコンバレーのエコシステムとイノベーション、(3)日本企業のシリコンバレー活用、グローバル活躍、DX、(4)日本の政治経済システムの変貌やスタートアップエコシスムの発展、(5)アメリカの政治社会的分断の日本への紹介など。学術論文、一般向け書籍やメディア記事、書籍を多数出版。