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 日本人のほとんどが日本にしかいられなかったコロナ禍の2年間で、いつしか考え方が単一的になり、同調性が求められるマスクとソーシャルディスタンスの生活で失われたもの、それはまったく異なる思考フレームを持ち寄っていろいろな物事を深く考える機会だったのではないだろうか。

 実際に今、シリコンバレーにふたたび訪問を始めた日本の大企業や研究者たちは情報の感度が決して低いわけではないのにもかかわらず、ここ数年で、さらに進化を遂げたシリコンバレーのエコシステムや、驚くほど普及しているEV(電気自動車)と充電インフラの現状を経験して世界観が大きく変わっている。日本国内で得られる情報と現状のギャップにショックを受けている方々が数多くいるところを著者は目の当たりにしている。

 やはり物理的に異なるところに身を置き、さまざまな新しい世界観や思考フレームに浸かることで、新しい突破口やパラダイムシフトが生まれ、モチベーションが湧く。いったん過去の話に戻って、著者が学部生として得たスタンフォード経験を例に出すとさらにわかりやすい。

■スタンフォード学部生経験で受けた刺激

 日本育ちの著者はまず学部生としてスタンフォード大学に進学した。インターナショナルスクールに通っていたため、高校までのカリキュラムはそもそもアメリカの大学入学向けに構成されていたので、第一志望だったスタンフォードに受かったのはうれしい限りだった。青空が広がり、都会とかけ離れた感覚のキャンパスは一年中大好きなスポーツもできるので、前年にはじめて見たときから惚れ込んでいた。

 学部生として経済学、東アジア研究、国際関係を専攻したが、1990年代の後半はドットコム・バブルのまっ最中だった。寮から起業する学生や、夏のインターンシップに参加したら車をもらったという話など、学生たちの間でも「これはバブルだね」という感覚はあった。

 同時に、シリコンバレーとはあまり関係ない学生がほとんどだったという印象を受けた。実際、コンピューターサイエンスを専攻している学部生は2010年から2020年の間に2.5倍以上になっていると学生新聞のStanford Dailyの調査結果がある。

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在学中は大学全体がシリコンバレー熱に燃えている感じではなかった