アイドルたちが本気で短歌を詠む「アイドル歌会」(撮影/林 晋介)
アイドルたちが本気で短歌を詠む「アイドル歌会」(撮影/林 晋介)

――俵さんにとって、短歌の魅力とは。

 歌を作っているからこそ、日常の小さなときめきに立ち止まれる。私にとってはそれが一番です。歌の種ってささやかなことから、大きなこともあるのですが、歌を作っていると、「あっ」と思ったときに立ち止まって、その心の揺れを見つめ直す時間が持てる。短歌を作っていなかったら、何かを思っても思いっぱなしで次のことに行ってしまって、せっかくのときめきがどんどん流されてしまう。忙しい日常の中ではどうしてもそうなってしまうと思うのですが、ちゃんと立ち止まることができるというのはすごく豊かなことですし、日常を丁寧に生きるということに結びついていくと思います。

――五七五七七という型が窮屈にも感じます。

 面倒くさい取り決めみたいに思うかもしれませんが、心や言葉の支えになってくれる。何文字でもいいって言われたら私も気持ちをまとめきれない気がします。でも型があることで、そこに身を委ねて、自由に言葉を探してくれば、型がなんとかしてくれるっていう安心感のようなものがある。型は「こうするとうまくいくよ」ということを、先人が試行錯誤した結果、生まれたものだと思っています。だから、千年以上前から残ってきたのではないでしょうか。

――他の表現手段にはない短歌ならではの面は。

 短歌は、詠まれた時代の一つの証言という側面があると思います。コロナ禍では新聞歌壇でも「手洗い」とか「マスク」とかの歌がバーッと増えた。時代の空気感を反映するっていうのが短歌の一つの良さであったり、役割であったりすると思いますね。新聞歌壇でいえば、政治や経済の視点から見たコロナではなく、「その時代を生きている人の声としてのコロナ」を表現しています。

 短歌って道具は言葉だし、技術は日本語ができること。すぐに始められるし、誰でも名歌を作れる可能性があります。極端かもしれませんが、野球を知らない人が大谷翔平選手からホームラン打てないじゃないですか(笑)。でも短歌だったら打てることがあるんです。

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