成熟社会はそれでは通用しない。正解が存在しないからだ。ゆえに、情報編集型のアクティブラーニングや探究授業が切望されているわけだ。

 しかし、こんな疑問も残ると思う。学校の先生っていうのは「正解を教えるプロ」であって、正解がない問題へのアプローチを教えるのはしんどいんじゃあないか、と。その通りだ。

 だからこそ、学校を職員室の先生だけで運営する時代を終わらせ、地域社会の資源を学校につなげるべきなのだ。大学生や塾の講師、地域に戻ってきた団塊世代やIT企業のビジネスパーソン、果ては職人さんまで。しかも、日常的な触れ合いが校内で起きるようにしたい。たまにゲストに招くだけではダメだ。

 それが「地域学校協働本部」や「コミュニティ・スクール」化の意義である。

 もう、学校を教員だけで運営するのは無理なのだ。そう、はっきり告げよう。学校という車を、職員室の先生と地域社会の両輪で動かしていくのだ。

 だからこそ、学校で学ぶ児童生徒も、大胆に地域社会の力を借りて、ナナメの関係を強めていくべきだ。先生・生徒や親子というタテの関係ではなく、友達同士のヨコの関係でもない、利害関係のない第三者との関係である。

 そうでないと、子どもたちのイメージできる職業が、親の仕事か教員(塾の講師を含む)、あるいは通学路の途中にあるハンバーガー店やコンビニの店員のような身近な存在に限られてしまうから。

●藤原和博(ふじはら・かずひろ)
1955年、東京都生まれ。教育改革実践家。78年、東京大学経済学部卒業後、現在の株式会社リクルート入社。東京営業統括部長、新規事業担当部長などを歴任し、93年よりヨーロッパ駐在、96年、同社の初代フェローとなる。2003~08年、都内では義務教育初の民間校長として杉並区立和田中学校の校長を務める。16~18年、奈良市立一条高等学校校長。21年、オンライン寺子屋「朝礼だけの学校」を開校する。 主著に『10年後、君に仕事はあるのか?─未来を生きるための「雇われる力」』(ダイヤモンド社)、『坂の上の坂』(ポプラ社)、『60歳からの教科書─お金・家族・死のルール』(朝日新書)など累計160万部。ちくま文庫から「人生の教科書」コレクションを刊行。詳しくは「よのなかnet」へ。

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