山田教授が担当する科目の成績評価について、ある学生の親から「なぜこんなに評価が低いのか」と大学にクレームが入ったのだという。教員生活で初めての経験だった。

「ある企業の人事担当と話したら、学生の採用面接に、親がついてきてもいいかと問い合わせがあり、断ったことがあったそうなんです。ただ、その人事担当は『親が来たらその学生は落とします』と断言していました。仮に子供にせがまれたとしても、自分が出ていくことが子供にとって本当にプラスになるか、そこはしっかり考える必要があると思います」

 この先、子どものさまざまなテリトリーに親が出ていくことが当たり前になっていくのか。だとすれば、要望やクレームに対応する側も、本当に動く必要のある事案なのか、逆に拒否したり受け流したりしなくてはいけない事案なのか、その見極めの負担は増すだろう。

「過保護は子供の自立を妨げ、社会全体としてはマイナスになります。ただ、私の教え子もそうですが、大半の若者はしっかり自立心を持って生きています。親に何とかしてもらおうという学生は増えてきてはいますが、まだまだほんの一部。今は、そこまで悲観はしていません」

 山田教授は、そう締めくくった。

(AERA dot.編集部・國府田英之)

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國府田英之

國府田英之

1976年生まれ。全国紙の記者を経て2010年からフリーランスに。週刊誌記者やポータルサイトのニュースデスクなどを転々とする。家族の介護で離職し、しばらく無職で過ごしたのち20年秋からAERAdot.記者に。テーマは「社会」。どんなできごとも社会です。

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