写真はイメージです( GettyImages)
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 うちの子供がいつも、帰ってくるとつかれたと言うんです! 飲食業界に詳しい関係者によると、近年、アルバイトの親が突然店にやってきて、そんなクレーム入れていくケースが散見されるという。「子供のためになるのか」。現場からは戸惑いとともに、そんな疑問の声が聞こえてくる。

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 首都圏のある飲食店。店の責任者が20代の男性アルバイトと仕事ぶりについての評価面談を行う席に、突然、予告もなく男性の母親がやってきた。

「うちの子供が、いつもバイトから帰ってくると『疲れた』って言っているんです!」

 あぜんとする店長。だが、「息子さんはもう成人なんですから、お母さんに突然来られても困ります。席を外していただけませんか?」と何とかなだめ、店から出て車の中で待機してもらった。

 他のアルバイトたちと任せている仕事は変わらず、「負担が重い」などの声は他からも出たことがなかった。

 実際、この男性アルバイトとの面談も、特にこじれずに終わった。

 だが後日、母親から店に電話が入った。

「退職させます」

 首都圏のある居酒屋。無断欠勤をしたり、客だけではなく同僚からも接客や勤務態度についてたびたびクレームが入っていたりした20代の女性アルバイトがいた。

 あるとき、見かねた料理長がやんわりとたしなめた。そうした注意は一対一や密室では絶対にしないように指示が出ていたため、他の従業員もいる場で注意した。

 衆目の中では、乱暴な態度や言葉はつかえない。

 だが、その翌日。

「パワハラをしただろう」

 電話をかけてきたのは女性アルバイトの親族。女性の勤務実態を伝えても、どこ吹く風。パワハラに当たる言葉は使っていないと、ていねいに説明したが、一歩も引きさがらずにパワハラを認めさせようとした。

最後は店側が折れ、いくらかの手当てをつける形で退職してもらった。

「ここ数年で、こうしたバイト先に親が出てきてトラブルになるケースが増えてきています」と話すのは飲食店の法律問題を専門とする石崎冬貴弁護士だ。

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國府田英之

國府田英之

1976年生まれ。全国紙の記者を経て2010年からフリーランスに。週刊誌記者やポータルサイトのニュースデスクなどを転々とする。家族の介護で離職し、しばらく無職で過ごしたのち20年秋からAERAdot.記者に。テーマは「社会」。どんなできごとも社会です。

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