■広島

 今季から新井貴浩監督が率いる広島のエースは、2018年に最多勝と最高勝率の2冠に輝いた32歳の右腕・大瀬良大地だろう。近年は故障離脱が増え、今季も9試合で2勝5敗、防御率3.42と絶対的な安定感はない。それでも藤浪晋太郎から死球を受けた直後に笑顔で「大丈夫、大丈夫」と返すなど、数々の聖人エピソードとともに「人格者」と呼ばれる男こそ、エースに相応しい。後継者として森下暢仁の名前が挙がるが、先日亡くなった北別府学氏を筆頭にした“カープ3文字エース”も継承する大瀬良の復活を、多くのファンが期待している。

■ヤクルト

 リーグ2連覇中のヤクルトのエースは小川泰弘だ。プロ1年目の2013年に最多勝、最高勝率の2冠を獲得し、翌年以降、今季も含めて計7度の開幕投手を務めた。その間、不振に陥った時期もあったが、リーグ連覇を果たした2021、22年と先発の柱として2年間で計19勝をマークした姿は、エースに相応しいものだった。だが、今季はここまで11試合で3勝6敗、防御率4.29で随分と物足りない。現在33歳、そろそろエースの座を引き渡す年齢になってきたが、高橋奎二(今季2勝4敗、防御率4.29)、奥川恭伸(今季1軍未登板)と振るわないのが苦しい。

■中日

 最下位ながら強力な先発投手陣を擁する中日柳裕也小笠原慎之介、そして高橋宏斗と好投手たちの名前が挙がるが、まだ大野雄大がエースだろう。プロ3年目の2013年から3年連続2ケタ勝利をマークし、2020年には20試合で10完投(6完封)を記録して沢村賞に輝いた安定感抜群の左腕。昨季まで4年連続で規定投球回に到達し、4年連続の防御率2点台以下の安定感はエース然としたものだ。34歳で迎えた今季、4月に左肘の遊離軟骨除去(クリーニング)手術を受けて復帰は8月予定。最下位と苦しむチームの中でエース復活が待たれる。


■オリックス

 王者オリックスのエースは、文句なしで山本由伸である。2021年(18勝5敗、防御率1.39、勝率.783、206奪三振、4完封)、2022年(15勝5敗、防御率1.68、勝率.750、205奪三振、2完封)と2年連続で「投手5冠」に輝いた右腕。投手5冠は、沢村栄治、スタルヒン、藤本英雄、杉下茂、杉浦忠、江川卓、斉藤和巳に続く史上8人目。これだけでも山本の“大投手”ぶりが分かるが、複数回達成は史上初の快挙だった。そして今季も9試合で6勝2敗、防御率1.59と安定感抜群である。ただ、山下舜平大(今季9試合6勝1敗、防御率1.51)という、その座を脅かす存在も出てきている点は見逃せない。

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